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<縮小の先へ 被災地と人口減>第2部 生活・保育/子育て環境 進む二極化

10人全員で広い園庭を駆け回る。人数は少ないが、元気な声が響く保育所は地域のよりどころだ=2月中旬、石巻市の市雄勝保育所

 東日本大震災で加速した人口減少は、子どもからお年寄りまで全世代の生活基盤に影響を及ぼしている。被災地では学校の統廃合や、病院の維持を巡る議論が続く。沿岸部から人口が流入した仙台圏は待機児童の問題が深刻度を増す。第2部は「生活」をキーワードに、最善の道を模索する地域の動きを追った。

 漁村の少子化が止まらない。震災で壊滅的な被害を受けた石巻市雄勝町で、昨年生まれた赤ちゃんはわずか3人。震災前の4分の1にまで減った。
 「近くに子どもがいない。保育所は、少しでも同年代の子と関わることができる貴重なよりどころだ」

<園児は現在10人>
 家族で漁業を営み、4月から2歳の長女を市雄勝保育所に預ける大和千恵さん(36)は保育所に期待する。
 住民にとって頼みの綱となった雄勝保育所だが、震災前に50人近くいた園児は現在10人にとどまる。「震災さえなければ、という思いはある」。雄勝町出身の阿部恵美子所長(58)が打ち明ける。
 津波で被災した保育所は2017年、定員を60から20に減らし、高台で再開した。定員を3分の1に減らしたにもかかわらず、園児の数は半分にとどまる。1、2歳児と4、5歳児は合同のクラスだ。
 雄勝町の人口は震災前の4300から1281に激減した。若年世代の流出が多く、子どもの減少はさらに進んだ。
 子どもが減れば、仲間同士の遊びからルールを学ぶ実体験が少なくなる。雄勝保育所は高齢者施設を訪問したり、近くの小中学校と合同で運動会を行ったりしながら、体験の幅を広げる工夫を図っている。
 「人数が少なくても一人一人にきめ細かく向き合える良さがあるはず。ここでしかできない保育に取り組みたい」。阿部所長ら保育士たちは腐心する。

<都市部は人口増>
 人口が減る被災地で、子育て環境をいかに維持するか。石巻市は定数減に加え、保育所や幼稚園の統廃合を進め、29あった市立保育所のうち3カ所を廃止した。2カ所は幼稚園と統合するなどして認定こども園への移行を決めた。
 市側は「このまま子どもの数が減り続ければ保育士の配置が減り、現場のシフトがきつくなるなどの課題が生じる」と説明する。
 一方、仙台圏など都市部では人口が集中し、保育所が不足する事態に直面している。
 名取市の仙台空港アクセス線杜せきのした駅近くで、4月開所予定の保育所の整備が急ピッチで進んでいる。沿線には震災後、高い利便性を背景に、被災した宮城県沿岸南部や福島県浜通りなどから子育て世代の流入が続く。
 市全体で0〜6歳の人口は500人増の約5500人となり、待機児童も増えた。4月1日入所の申し込みは昨年比16%増の586人に上る。
 市は新年度、保育所4カ所を新設し、約300人を新たに受け入れる予定だ。ただ、急増するニーズを全て満たすのは難しい。10月に始まる幼児教育・保育無償化の影響で、入所希望者はさらに増える可能性もある。
 市こども支援課の加藤公一課長は「長期的には人口減に転じる場合もあり得るが、需要が多い状況は今後しばらく続く」と予測。保育士不足に直面する中で「保育の質をいかに維持するかが課題だ」と指摘する。
 安心できる子育て環境をつくるため、人口流出、流入双方の最前線で試行錯誤が続く。


2019年03月07日木曜日


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