福島のニュース

<あの日を力に>子どもたちの選択[3]好きな古里に恩返し

地域課題の解決に向け、自らの取り組みについて発表する石井さん=2月16日、仙台市青葉区

◎課題解決の実践例報告/ふたば未来学園高3年 石井美有さん(17)

 ふたば未来学園高(福島県広野町)の石井美有さん(17)は「高校3年間の集大成」との思いで発表会に臨んだ。

<再生への挑戦>
 「地域の人が意欲ある若者を支える仕組みを提供したい」
 2月16日、高校生による地域の課題解決に向けた実践例を発表する「マイプロジェクト」東北大会が仙台市であり、古里再生の挑戦を報告した。
 東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県双葉町で生まれた。学校がある広野町を含め、地元の双葉郡は原発事故でコミュニティーが崩壊した。
 取り組んできたのは、生徒が運営するカフェ開設の準備作業。高校の新校舎内に新年度誕生する地域協働スペースにオープンする予定だ。
 地域を何とかしたい大人と、地域に貢献したい高校生をつなぎたい−。3年生でただ1人、カフェの土台づくりに参加し、後輩たちを手伝った。
 自信たっぷりに見られるが、3年前までは違った。小学4年で被災し、母親の実家がある県内の自治体で卒業まで過ごした。友達がなかなかできず「1人の方が楽」と考えていた。
 進学したいわき市の中学校は、生徒数が600人以上で「大勢の中に埋もれているよう」。自宅で寝転ぶ時間が増え、成績も落ちた。
 開校2年目のふたば未来学園高に入り、演劇部への入部が変わるきっかけになった。1期生の先輩たちが震災体験を基に脚本を練っていた。過酷な逃避行やいじめ体験が赤裸々に語られ、衝撃を受けた。初めて自分も過去に向き合い、内面を掘り下げた。

<目標が鮮明に>
 浮かび上がってきたのは事故前の懐かしい古里の情景だ。友達と遊んだ児童館、自宅近くのグラウンドや図書館、祖母の家。ログハウス風の自宅はぬくもりに包まれていた。
 「こんなにも古里・双葉町が好きだったんだ」。進むべき方向が見えてきた。
 先輩が発案したプロジェクトに参加し、借りた畑で野菜を作って生産者と市を開いた。学校の探究学習でコミュニティー再生に向けて住民に聞き取りを重ね、住民間の交流を促す行事を企画した。
 数々の実践を通じ、目標がより鮮明になった。「問題を解決するだけでなく、人を助ける仕組みづくりがしたい」と。
 4月から東京の大学で経済学を学びつつ、双葉郡と関わり続ける。近く一般社団法人を郡内に設立し、代表を務める予定になっている。高校の後輩たちが商品の企画や開発、販売などの実践を重ねられる場を提供する計画だ。
 「何もできなかった自分を成長させてくれた古里に恩返しがしたい。もっと新しい、もっと深い知識を吸収したい」
 古里に必ず戻る。その日に備えて。


2019年03月08日金曜日


先頭に戻る