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<ILC>誘致結論先送り 文科省表明に至らず、検討継続

 岩手、宮城県境にまたがる北上山地が建設候補地の超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、文部科学省は7日、「誘致の表明には至らない」との見解を明らかにした。一方で「計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する」とし、誘致するかどうかの検討は続ける方針を示した。研究者側は一定の評価をした上で、引き続き政府に誘致を求めていく姿勢だ。
 研究者組織のリニアコライダー国際推進委員会(LCB)と国際将来加速器委員会(ICFA)が東京都内で開いた合同会議で、文科省の磯谷桂介研究振興局長が報告した。LCBは誘致に前向きな意思表明を求めていたが、結論は先送りされた形となった。
 見解は(1)日本学術会議のマスタープランなど正式な学術プロセスでの議論が必要(2)欧州素粒子物理戦略など議論の進捗(しんちょく)を注視(3)計画に科学的意義はあり、文科省は関心を持って国際的な意見交換を継続−とした。
 学術会議が昨年12月、建設に7355億〜8033億円かかるなど巨額負担に懸念を示し「政府の誘致判断は慎重にするべきだ」と回答したことを踏まえた。
 柴山昌彦文科相は取材に「各省庁との調整結果だ。関係者は見解について議論してほしい」と述べた。磯谷局長は「誘致を表明する熟度ではないが(検討の)段階としては前に進んでいる」との考えを示した。
 国際的な意見交換の枠組みとしては日米両政府による加速器コスト削減の共同研究を挙げた。ドイツ、フランスとも同様の事業を始める考えを示した。
 中田達也LCB議長は「文科省が初めて公的に関心を示し、欧米と意見交換を続ける意向を示した点は進展」と評価。ジェフリー・テイラーICFA議長は「誘致の明確な意思表示がなくても終わったことにはならない。早期の意思表明を求めていく」と語った。
 欧州で2020年5月に始まる新しい素粒子物理学戦略で、ILCへの協力が主要議題に採用されなければ計画実現は難しくなる。LCBは戦略策定の日程を考慮し、7日までの誘致表明を政府に求めていた。

[国際リニアコライダー]地下に設置する全長20キロの直線形の加速器。ほぼ光速に加速した電子と陽電子を正面衝突させ、宇宙誕生直後の状態を再現する。衝突で生じる素粒子「ヒッグス粒子」の精密測定を通し、宇宙の成り立ちや素粒子物理学の新理論を探究する。国際研究者組織は2030年代の稼働を目指す。


2019年03月08日金曜日


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