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<震災8年>「逃げろ」の思い届ける 災害情報「NERV」運営・石巻出身の石森さん

「いち早く情報を伝え、逃げるきっかけにしてほしい」と話す石森さん

 地震情報や気象警報などの災害情報を瞬時に発信するツイッターアカウントがある。その名も「特務機関NERV(ネルフ)」。運営するのは、東京都内でITセキュリティー会社を経営する石森大貴さん(28)=宮城県石巻市出身=。東日本大震災から8年。津波が故郷を襲ったあの日に伝えられなかった「逃げろ」との思いを届け続ける。

 「NERV」は気象庁が発表する震度情報や緊急地震速報、自治体からの避難情報を伝える災害情報共有システム(Lアラート)などを配信する。開設は2010年2月。震災後、フォロワーは急速に増えて現在は約66万に上る。個人運営のアカウントとしては異例の数だ。
 石森さんは石巻市渡波出身。市内の高校を卒業し茨城県内の大学に進んだ。「NERV」の名称は大好きなアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する組織にあやかった。
 作品中のNERVは敵の襲来を知らせる「警報」を出す。当初は「エヴァンゲリオンの世界観を楽しみたい」と気象警報に合わせ手動でツイートしていた。
 都内に移り住んですぐ、震災が発生した。地震直後は石巻の家族と連絡がついたが、大津波警報が発令されると電話はつながらなくなった。何度も「津波がくる。逃げて」とメールを送ったが、返信はない。ようやく無事が確認できたのは4日後だった。
 JR渡波駅近くの実家は2メートル近い津波に襲われた。1階が浸水し全壊。家族は2階で在宅避難生活を強いられた。市内の病院で働いていた親戚が亡くなった。
 「確実にもっと早く情報を伝えられる方法はないかと考えたのがツイッターでの発信だった」と石森さん。石巻の被災状況や首都圏での計画停電の情報を出し続けた。エヴァンゲリオンの版権元の了解を得て、得意のプログラミング技術でシステム開発に取り組んだ。
 警報発表などの情報収集は、石森さんが大学在学中に起業したITセキュリティー会社「ゲヒルン」が担う。気象庁やLアラートの運営組織と契約し、情報を受信すると自動で内容を配信できるようプログラムの改良を加えた。震度情報や台風の進路を示す画像も自動で作りだし投稿する。
 ツイートを多言語化したり、色覚障害がある人にも見やすい色使いにしたりして工夫を重ねる。「より早く確実に情報を伝え、身近な人を亡くす悲しみを少しでも減らしたい」。震災を教訓に命を守るための情報を送り続ける。


2019年03月09日土曜日


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