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<あの日を力に>子どもたちの選択[4]地元に貢献、道を探す

主力商品のワカメを選別する及川さん=岩手県陸前高田市の広田湾漁協

◎浜の復興迷いつつ前進/広田湾漁協 及川昴大さん(23)

 岩手県陸前高田市の広田湾漁協で働き始めて1年がたつ。「地元のために何ができるのだろう」。答えはまだ見つからない。
 及川昴大さん(23)が陸前高田市小友中(現高田東中)を卒業する間際、東日本大震災が発生した。本当なら翌日が卒業式だった。
 「津波が来る」。一緒にいた両親、兄とすぐ近くの高台に避難した。一夜明けて目に飛び込んだのは、変わり果てた古里の姿だった。「これからどうなってしまうのか」。住み慣れた家はがれきに覆われていた。

<仲間8人犠牲>
 本当の衝撃はこの後に待っていた。野球部の仲間8人が犠牲になった。小、中学校と投手だった及川さんとバッテリーを組んだ後輩も亡くなった。葬儀への出席で春休みが終わった。
 進学した高田高で野球部に入った。「みんなの分も野球を続けよう」と思った。校舎は被災し、グラウンドも使えない。公営グラウンドなどで練習を続け、3年生の夏の県大会は遊撃手として3回戦まで進んだ。
 野球部の先輩に誘われ、立教大に進んで野球を続けた。学生生活は楽しかったが、高層ビルに囲まれた都会の窮屈さに最後までなじめなかった。「陸前高田の方が落ち着くな」
 就職活動に本腰を入れようとした頃、陸前高田市役所に勤める高校時代の野球部の同級生と会った。「いつか(プロ野球の)楽天の試合を陸前高田でやりたい」。同級生の夢がシンクロした。

<願いかなわず>
 市役所職員として一緒に楽天の試合を開催し古里を盛り上げたい−。願いはかなわず、知人に紹介された広田湾漁協に就職した。水産業は門外漢。それでも「何かの縁かもしれない」と自分を納得させた。
 広田湾漁協は震災で漁業施設や事務所が被災し、職員1人と組合員43人が犠牲になった。燃油高騰などで震災前から経営は厳しく、近年は高齢化で組合員が減少している。
 課題が山積する中、浜の復興を託そうと、漁協は毎年1、2人の新卒者を採用している。砂田光保組合長は「及川さんのような大卒者は頼もしい。いろいろな部署を経験し、将来、漁協を背負う人材に育ってほしい」と願う。
 現在、加工場に配属され、主力商品のワカメの選別やホタテの出荷作業に精を出す。「ワカメの色の区別が難しい。学ぶことばかり」と慣れない仕事と向き合う毎日だ。
 父の正さん(65)は「野球の練習では1人だけ残ってコツコツとやる真面目な性格。仕事の愚痴は聞いたことがなく、根気強く取り組むと思う」と見守る。
 漁業の面白さ、つらさが少しだけ分かってきた。「正直、どういう形で地元に貢献できるのかまだ分からない。でも、この環境でできる限り頑張ってみたい」。迷いながら、浜の復興への道を歩み続ける。


2019年03月09日土曜日


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