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<縮小の先へ 被災地と人口減>第2部 生活・医療介護/超高齢化 新たな策探る

気仙沼市立病院で診察を待つ患者ら。高齢化が進む地域を支える医療が求められている

 人口が減る。地域を支える担い手が足りない。人口減少局面で起きた東日本大震災は、過疎化や少子高齢化を加速させた。震災から間もなく8年。縮む被災地の先に広がる風景は−。「生業(なりわい)」「生活」「インフラ」の三つをキーワードに、先鋭化する課題に向き合い、模索する姿を追った。 人口が減る。地域を支える担い手が足りない。人口減少局面で起きた東日本大震災は、過疎化や少子高齢化を加速させた。震災から間もなく8年。縮む被災地の先に広がる風景は−。「生業(なりわい)」「生活」「インフラ」の三つをキーワードに、先鋭化する課題に向き合い、模索する姿を追った。

 気仙沼市で2月上旬にあった市病院事業審議会で、市立病院の横田憲一副院長が危機感をにじませた。

<500人施設入れず>
 「全国でも上位の高齢化率。人口流入も少ない地域で、看護師ら医療従事者をどこまで確保できるか」
 東日本大震災後の人口減少や少子化により、市内の看護学校は志願者数が右肩下がり。医師の都市部への偏在も解消されず、高齢者らを支える地元の人材が先細る。
 気仙沼市は震災の津波で甚大な被害を受け、1万人近く人口が減った。高齢化率は4割に迫り、施設に入れない高齢者は500前後に上る。急性期を過ぎた高齢者を受け入れる病床も不足している。
 市立病院に通う農業菅原美栄子さん(80)は「安心できる医療や福祉を守ってほしい」と訴える。震災の影響で3世代、4世代が同居する住環境が大きく変化し、独居老人も増えている。
 税収が減少する中で地域の医療をどう維持するか。市が昨年12月、病院事業審議会を立ち上げたのはこうした危機感が背景にある。市は「2020年度の復興期間終了後、市本体の財政が厳しくなる恐れがあり、今が正念場だ」と強調する。
 高齢化が加速する被災地で介護との連携で病院の機能強化を図り、高齢者の受け入れを積極的に進める例もある。
 津波で被災し、16年に再建した岩手県大槌町の県立大槌病院は18年10月、50床のうち25床を「地域包括ケア病床」にした。病状が安定した患者を最大で60日間受け入れ、リハビリを通じて施設や在宅医療に橋渡しする。介護者の冠婚葬祭などに合わせて一時的に患者を受け入れる「レスパイト入院」も導入した。

<日本救うヒント>
 震災後、内陸部への人口流出に伴い、年間の病床利用率は震災前6年間の平均75.9%から40%台に低迷していた。ところが、ケア病床に限れば1月の利用率は約80%に上り、2月にはさらに5床増やした。緊急性の高い患者は、近隣の県立釜石病院と連携して対応する。
 高齢者や認知症患者が介護側に回る「老老介護」や「認認介護」が増える中、大槌病院の取り組みは被災地のみならず過疎地の注目を集める。坂下伸夫院長は「今後、被災地をはじめ、東北でますます必要になる病床だ」と強調する。
 介護予防などで超高齢化時代に「先手」を打つのは、震災後に気仙沼市内の医療・福祉関係者の有志が設立した「日本の福祉を考える気仙沼若手の会」だ。
 介護の知識や予防、高齢者支援への理解を広げる講座を各地で開くなど、市民レベルで地道な取り組みを続ける。
 市内で介護事業所を経営する熊谷光二会長(44)は「行き場のない、SOSの状態にならないために今できることは何か。団塊の世代を中心に、イメージを持ってもらう活動を進めたい」と話す。
 超高齢化社会を先取りした被災地での取り組みに、近未来の日本を救うヒントが隠されている。


2019年03月10日日曜日


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