宮城のニュース

<あの日を力に>子どもたちの選択[5完]子どもの心をサポート

震災前は住宅地だった東松島市大曲浜で被災体験を語り継ぐ武山さん

◎資格取得目指し大学へ/石巻・桜坂高3年 武山ひかるさん(18)

 東日本大震災の語り部を続ける石巻市桜坂高3年武山ひかるさん(18)=東松島市=は4月、故郷を離れ、群馬県の東京福祉大社会福祉学部に入学する。
 社会福祉士と精神保健福祉士の二つの国家資格を取得し、スクールソーシャルワーカーを目指す。「行政や学校などと協力し、困難を抱える子どもをサポートしたい」と目標は明確だ。

<避難所を転々>
 きっかけは小学4年で経験した震災にさかのぼる。東松島市大曲の自宅は津波で全壊し、石巻市の小学校体育館など3カ所の避難所を転々とした。
 沿岸の住宅地は広範囲に津波被害を受け、住まいや家族を失うなど子どもたちの生活環境は大きく変化した。気持ちの面でも不安定になり、言動が荒れたり、反対に口を閉ざしたりする同級生の姿が目に付いた。
 「子どもは大人のように感情を言葉にできない。誰かがちょっとしたサインに気付かないといけない」。中学生の頃からカウンセラーなど福祉の仕事に引かれるようになった。
 被災地で盛んに行われた心のケアに触れた経験も大きい。印象的なのは一般財団法人C・W・ニコル・アファンの森財団(長野県)の活動だ。2泊3日で東松島市の子どもたちを長野県の森に招き、自然との触れ合いで心を癒やす体験プログラム。小学6年の時に初めて参加した。
 木登りや火おこし。東松島では見慣れないモリアオガエルも捕まえた。夜は懐中電灯を持たずに森の中を散策。怖かったが、わくわくした記憶が鮮明に残る。

<体験ベースに>
 高校1年の時にサポート役として再訪した。夜遅くまで続いた打ち合わせ。子どもの好奇心を抑えず、やりたいことを最大限尊重した。「自分たちが楽しめたのはこういう準備があったから。そう考えたら『すごい』と思った」と支援のありがたみを実感した。
 同じ頃、震災を語り継ぐ市内の学生グループ「TTT」に加わり、自分や友だちの被災体験を話し始めた。「聞いて良かった」と感謝された。県外から講演の依頼も舞い込み、社会との接点が一気に広がった。
 昨年は震災を知らない子どもたちに経験を伝えようと、絵本作りに挑戦した。男の子が震災で犠牲になった両親と夢で会い、2人の分も生きようと決意するストーリー。一緒に語り部をする友だちの体験をベースにした。
 イラストは自分で描いた。小学生の頃から絵が好きで、中学で美術部の部長を務めた。1作目の絵本は水彩の色鉛筆と絵の具で描いたが、2作目はスマートフォンの絵描きアプリを使って制作中だ。
 「震災は今でも夢に出たり思い出したりするつらい経験だけれど、震災があったから今の目標とする道がある。これからも前に進む糧にしたい」。大学生になっても夢を追い求めながら震災を語り継ぐ。


2019年03月10日日曜日


先頭に戻る