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<震災8年>「廃炉まだ遠い」大熊町民が見た福島第1原発 作業安全性に不安消えず

1号機の建屋前で東電の担当者から説明を受ける(左から)村井さん、井戸川さん

 東京電力福島第1原発は未曽有の事故から8年を迎える。立地町の一つ、福島県大熊町は今春、放射線量が比較的低い大川原、中屋敷の両地区の避難指示が解除される見通しだ。廃炉作業が続く現場は住民にどう映るのか。2人の町民と共に第1原発に入った。(福島総局・関川洋平、写真部・佐藤琢磨)

 2人は井戸川洋一さん(75)と村井光さん(69)。ともに同町大野地区から会津若松市に避難している。
 井戸川さんは元行政区長会長で、県の廃炉安全確保県民会議委員を務める。村井さんは元造園業。2009年の退職まで第1原発の植栽を手掛けていた。
 「コンクリートと鉄板だらけだ」。およそ10年ぶりに敷地内に足を踏み入れた村井さんが漏らした。

<タンク1000基>
 かつて世話をした芝生や立木はない。汚染水の原因になる雨水の浸透を防ぐため舗装された地面に並ぶのは、汚染水を浄化した処理水を貯蔵する約1000基のタンク群だ。「あそこには高さ2メートルのツツジがあった」と指さした先もモルタルで覆われていた。
 高台から1〜4号機を望む。放射性物質を含むちりの量が減り、昨年11月からヘルメットやマスクを着けず、ほぼ普段着で視察できるようになった。
 安全性の高まりを説明する東電の担当者。2月に実施された溶融核燃料(デブリ)とみられる堆積物の接触調査に話が及ぶと、2人の顔がやや曇る。
 将来のデブリ取り出しは安全に行えるのかどうか。
 「いくら『大丈夫』と言われても、どうしても心配になる」。事故発生から丸8年を経て、何とか2地区の避難指示解除が見えた大熊町を「二度と汚さないように、切に願う」と井戸川さんは話した。

<低い運転音>
 大量の廃棄物が生み出される廃炉作業のもう一つの側面も垣間見えた。
 使用済みの手袋やマスクを入れた灰色のコンテナが至る所に積まれている。計5万3000個が焼却待ちだという。
 続いて汚染水を浄化する多核種除去設備「ALPS」(アルプス)の建屋に向かった。今度は全面マスクと防護服が必要だ。
 汚染水が通る配管が整然と接続され、低い運転音が響く。設備を点検する作業員の姿も目にした。
 「処理系統は三つあり、それぞれ1日250トンの汚染水を処理できる」と東電の担当者。井戸川さんは「これまではアルプスがどんな施設か分からなかった」と打ち明けた。
 村井さんは2地区の避難指示解除後、大熊町に戻る予定だ。
 「進展したとはいえ、廃炉作業はまだまだこれからとも思った。大熊町の暮らしの復興もこれからだ」
 視察を終え、町民の思いを代弁するように語った。


2019年03月10日日曜日


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