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<東北の本棚>作品に込めた思い探る

藤沢周平「人はどう生きるか」     遠藤崇寿・遠藤展子

藤沢周平「人はどう生きるか」 遠藤崇寿 遠藤展子 監修

 藤沢周平(1927〜97年、鶴岡市出身)は言うまでもなく、時代小説を代表する作家の一人だ。江戸時代の庶民や下級武士を主人公に、人生の哀歓を、愛情あふれる筆致で描いた。本書は藤沢の代表作の文庫解説に新たな寄稿やインタビューを加え、藤沢文学の魅力を丁寧に解き明かす。
 しばしば指摘されるのは自然描写の美しさと弱者への温かなまなざしだ。女優の竹下景子は情景描写について「空の色や夕焼けを映した川面の色などが、登場人物の心情をよく映し出す」と話す。解剖学者の養老猛司は「人間が自然の一員として、つつましくもたくましく生きている藤沢作品の魅力は、作者が東北出身であることと無縁ではない」とつづった。
 藤沢作品で初めて時代劇を撮った映画監督の山田洋次は「徹底して貧しい人たち、民衆の側に立ち続けた藤沢のまなざしは、寅さん・渥美清とひどく似ている」と述べる。作家の関川夏央は「闇の梯子(はしご)」を取り上げ、藤沢自身の人生が色濃く反映されていることを指摘。私小説がきらいな藤沢が「私的時代小説」を書いた背景にも迫る。
 インタビューでは、竹下のほか野球解説者の江夏豊、元NHKアナウンサーの松平定知、文芸評論家湯川豊ら計6人が自分の人生と作品との関わりなどについて詳述。名作が語り掛ける「生きることの意義、素晴らしさ」を浮かび上がらせていく。
 藤沢ファンにはその文学世界を見つめ直す良い機会となり、あまりなじみのない人は作品を読んでみたくなるに違いない。
 遠藤崇寿は藤沢周平事務所代表取締役、妻でエッセイストの展子は藤沢の長女。2人とも鶴岡市立藤沢周平記念館監修者。
 悟空出版03(5369)4063=1728円。


2019年03月10日日曜日


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