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再生する故郷を彩り豊かに 女川出身の絵本作家が作品展示、構想始動

復興の進む現在の町の姿に着想を得た「幸せの樹」を寄贈した神田さん=11日、宮城県女川町役場庁舎

 宮城県女川町出身の絵本作家神田瑞季さん(23)=相模原市=が、東日本大震災で甚大な被害を受けた町全体を舞台にアートプロジェクトを始めた。初回として11日、震災から立ち上がる女川に着想を得た作品「幸せの樹」を町に寄贈した。「女川がたくさんの色であふれるすてきな町になってほしい」と夢を描く。
 「幸せの樹」は、色とりどりの花が咲き誇る大木を縦50センチ、横61センチのキャンバスに描いた。復興計画期間が本年度で終了し、新たな歩みを始める町の今を表現。役場庁舎の正面入り口近くに飾られた。
 1日で一気に描き上げたといい、「町の皆さんの頑張りで、きれいな花が開いたのだと思う」と話す。
 幸せの樹を皮切りに「COLOR LIFE PROJECT」を展開。役場の図書室など町内各所への作品展示を構想している。
 宮城野高1年だった2011年秋、町内のがれき処理場の壁に「再生」というタイトルで大きな花木を描いた。「強く立派な幹にきれいな花を咲かせられる日が、きっと来る」と未来への希望を託した絵は、津波で色を失った町に温かな彩りをもたらした。
 津波で祖父明夫さん=当時(78)=を失った。近隣住民に避難を呼び掛けている間に犠牲になったとみられる。
 「祖父がいなくなれば、私たち家族がうまく生きていけなくなるかもしれない。それでも人を助けることを選んだのはどうして」
 浮かんでくる疑問は、祖父の行動を否定しているようにも思えた。
 悩みながら8年を過ごし、最近ようやく納得できる答えにたどり着いた。
 「祖父は、自分が欠けても家族はしっかりやっていけると信頼していたのだと思う。尊敬する祖父のように、私も人のために何かできるようになりたい」
 復興支援の絵はがきなどに採用された作品が注目され、神田さんの震災体験を基に童話作家内田麟太郎さんが書いた絵本「なみだはあふれるままに」の作画を担当。東北芸術工科大時代の16年に出版された。
 将来は町で個展を開く夢もある。「見た人の気持ちが明るくなるきっかけになればうれしい」。亡き祖父と古里への思いを絵筆に込めて、前進し続ける。


2019年03月13日水曜日


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