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<縮小の先へ 被災地と人口減>第3部 インフラ 地域の足(1)鉄道/鉄路持続 交流拡大が鍵

開業間近のリアス線。沿線住民の協力と交流人口の拡大が地域の足存続の鍵を握る=三鉄宮古駅

 東日本大震災の被災地で、住民の生活に欠かせない交通機関や公共施設の復旧復興が急ピッチで進められている。将来に向けて維持できるのか。利活用は計画通りに進むのか。加速する人口減少を前に、被災地の試行錯誤が続く。第3部は「インフラ」をキーワードに課題に向き合う姿を追った。

 待ち続けた「その日」が目の前に迫る。

<25年連続赤字へ>
 東日本大震災で被災したJR山田線の宮古−釜石間(55.4キロ)が復旧を遂げた。鉄道施設は岩手県などが出資する第三セクターの三陸鉄道に無償で移管。現行の南、北リアス線に移管区間を加えたリアス線が23日に開業する。
 「宮古から南に行くことができ、通勤通学のほか観光客の選択肢も広がる」。宮古市の三鉄本社で中村一郎社長(63)が気を吐く。
 だが、一本につながる鉄路の未来は必ずしも明るくない。本年度の決算見通しで当期の経常損失は3億6756万円。25年連続の赤字は必至だ。年間の利用客は、三鉄が開業した1984年の268万9000人がピークで、2016年には51万3000人にまで減少した。
 国勢調査によると、15年の沿岸12市町村の人口は25万1465で、10年に比べ2万人以上減った。震災によって加速した人口減が影を落とす。
 そんな中、旧山田線区間の宮古市八木沢地区には、リアス線誕生を機に新駅「八木沢・宮古短大駅」が設置される。
 津波被害を免れた八木沢地区には災害公営住宅が立ち並ぶ。市人口が縮小する一方、今年1月の一帯の居住者は1721人で、震災前の11年2月より156人増えた。新駅効果によりさらなる増加が見込まれる。
 自治会長の田崎敬一さん(79)は「国鉄時代からの悲願だった」と新駅に期待を寄せつつ「三鉄を支えるのは住民という意識が重要」と気を引き締める。
 岩手県沿岸部にはリアス線と並行し、仙台−八戸間をつなぐ三陸沿岸道(359キロ)の整備も進む。並走する区間は通行無料で、マイカー利用者にとって大きな魅力だ。
 「道路利用が増えれば鉄路がおろそかになる。相反することを一緒にやらなければならない」と野田武則釜石市長。地域再生に不可欠なインフラの多層化が新たなジレンマを生む。
 地方活性化などが専門の日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員(53)は「『地域の足』だけでは路線の持続は難しい。交流人口を増やし、鉄路単体ではなく地域全体の黒字を目指す発想が必要だ」と助言する。
 宮城県女川町の新市街地で、白い屋根のJR石巻線女川駅が目を引く。須田善明町長がJR東日本に強く要望し、15年3月に運行再開にこぎ着けた。

<新市街地をPR>
 町の整備は進むものの、駅利用客は戻らない。17年度の1日平均の乗車数は222人で、10年度の314人から約3割減った。
 町の人口は10年の1万51が15年は6334となり、4割近く減少した。「生活の足として欠かせない公共交通機関だが、乗客を一気に増やす妙手はない」と須田町長は頭を痛める。
 鉄路をどう生かすか。町商工会参事の青山貴博さん(46)は「滞在型の観光客を増やすツール」と明快だ。駅舎に温泉施設があり、周辺には飲食店が集中する。徒歩で回遊できる新市街地の特性をPRしたいと考えている。
 復興のシンボルと位置付けられた鉄路の復活。青山さんは「復興した後も観光客を呼び込めるか。女川の真価が問われる」と覚悟を口にする。


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2019年03月13日水曜日


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