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<縮小の先へ 被災地と人口減>第3部 インフラ 防潮堤(3)/背後地活用 展望描けず

高さ9.7メートルの防潮堤建設が進む雄勝地区中心部。防潮堤と高台の間に民家はない

 東日本大震災の被災地で、住民の生活に欠かせない交通機関や公共施設の復旧復興が急ピッチで進められている。将来に向けて維持できるのか。利活用は計画通りに進むのか。加速する人口減少を前に、被災地の試行錯誤が続く。第3部は「インフラ」をキーワードに課題に向き合う姿を追った。

 荒涼とした浜で、後戻りのできない巨大事業が突き進む。
 「海が見えない。もう自分がいるべき所ではない」
 石巻市雄勝地区で特産「雄勝硯(すずり)」を製作する高橋頼雄さん(51)は、月内に町を離れる決意を固めた。

<「何を守るのか」>
 同地区の中心部は雄勝湾の奥にあり、東日本大震災の津波で壊滅した。計画高9.7メートル、延長約1.8キロの防潮堤が日々、高さを増す。コンクリートの壁は古里の風景を一変させた。
 高橋さんは防潮堤建設に一貫して反対してきた。防災集団移転団地は海岸から約100メートル離れた海抜20メートル超の高台に整備され、防潮堤と高台の間に家はない。
 「何を守ろうとしているのか」。防潮堤建設を巡る宮城県との協議で、高橋さんは住民団体の一員として担当者を問いただした。回答は「道路を守る」。不信感は決定的になった。
 雄勝地区の人口は、震災前の3分の1となる約1280に激減。地域の存続すら危ぶまれる。
 「安全だけでは住民は暮らしていけない」
 一般社団法人雄勝花物語の徳水博志共同代表(65)は地域消滅の危機を抱き、防潮堤との共存を探る。
 被災した土地約6000平方メートルを市から借り受け、土壌を改良。観光庭園の雄勝ローズファクトリーガーデンを整備し、隣接地でオリーブの特産化に励む。2014年度以降、123本を植栽した。
 徳水さんは「防潮堤は壊しようがなく、町を捨てるわけにはいかない。持続可能なまちをつくるため、平地の利活用を進めるしかない」と懸命に前を向く。

<ほとんど未舗装>
 宮城県南三陸町は、町管理の19漁港に国費で防潮堤を整備する。総工費は約242億円。震災から8年。完成は1カ所のみで、進捗(しんちょく)率は5〜30%にとどまる。
 「巨額投資した防潮堤ができた時、未活用の背後地をどうするかという問題は避けられない」。町幹部は焦りの色を深める。
 防災集団移転を促すため被災した宅地95ヘクタールを買い上げたが、45ヘクタールの使途は未定だ。多くは海岸周辺に点在し、民有地も混在する。集約の方策はなく、町も活用のビジョンを描けない。
 同町戸倉の長清水地区は10メートル近い津波に襲われた。漁港と集落の間には20年度までに高さ7.3メートルの防潮堤と、最大10メートルのかさ上げ道路が整備される。
 地区内で漁港の背後に広がるエリアの世帯数は37から6になった。集落の道路のほとんどが未舗装。空き地に漁師の作業小屋や資材置き場があるだけだ。
 同地区で被災した自宅を修繕して暮らす宮司佐藤泰一さん(68)は「全ての工事が終わらないと、所有していた土地の範囲すら分からない」と表情を曇らせ、荒れ果てた地域を見やる。
 「震災から時がたつにつれて地域の活力が失われてきた。土地活用の意欲も下がっている」
 宮城県内の防潮堤計画は総延長約244キロで、海岸線全体の29%に及ぶ。防潮堤によって守られる広大な土地。人口減が急速に進む被災地にあって、その行く先は混沌(こんとん)としている。


2019年03月15日金曜日


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