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<阿武隈川物語>(37)子どもの言葉爽やか

さわやか詩集の表彰式で、入賞作品を朗読する児童=1月27日、福島県矢吹町文化センター
大滝清雄の自筆原稿や詩集

◎第7部文学(4完)詩人(下)

 わたしは耳をすませて風の音を聞いた
 いねがゆれる音
 風の音はまるで波の音
 「緑の海だね」
 わたしはお母さんに言った

<矢吹の自然題材>
 日本三大開拓地の福島県矢吹町は毎年、町内の児童生徒の作品による「さわやか詩集」を発行する。町出身の詩人、大滝清雄が1989年、町図書館の開館に合わせて蔵書を寄贈、大滝清雄文庫が開設されたのを機に始まった。
 30年の節目の2018年度の大賞「大滝清雄賞」(小学生の部)に選ばれたのが、善郷小4年藤田唯愛(いちか)さん(10)の「緑の海」。藤田さんは「矢吹は自然がいっぱい。想像したことを自由に書ける詩は楽しい」と喜ぶ。
 18年度は町内小中学生の96%に当たる1297点が寄せられた。町挙げての文芸活動で、全作品の掲載も特徴だ。
 川端康成に師事し、現代詩人として活躍した大滝。故郷の自然を題材にした詩は多い。
 かがやく大地を見つめていると
 大地から生れたのだと思いたい。
 澄みとおった空を見つめていると
 空から生れたのだと思いたい。
 大滝の初期の詩「風」は、藤田さんの作品に呼応するようだ。
 詩集審査委員長の菅野昌和さん(81)は、矢吹中の国語教師だった大滝の薫陶を受けた。「褒め上手で、その気になった」と語る。

<震災支援恩返し>
 同町三神地区の景政寺に生まれた大滝の声は朗朗として、詩を読むと廊下に生徒が集まった。菅野さんが高校で同級生と創刊した文芸同人誌「の」は今も続く。文学が生涯の趣味だ。
 菅野さんの父は常磐炭鉱の坑夫で、終戦の年の10月に矢吹開拓に入植した。父は出稼ぎ、菅野さんも17歳でトンネルの掘削現場に出た。酪農を営むようになって生活が安定した。30年前に肉牛に転換し、ピーク時は100頭飼った。
 だが、東京電力福島第1原発事故の風評被害と病気が重なり、17年に廃業した。「最後の牛に手を振って別れた。核エネルギーの平和利用なんて、あり得ない」と指摘する。
 さわやか詩集も近年、東日本大震災をテーマにした作品が少なくない。
 「感謝」と題した作品で、17年度の大滝清雄賞だった矢吹中1年柏村玲帆さん(13)は「震災7年で気持ちが薄れてきた。大事な経験を心に残したかった」と言う。
 18年度の大滝清雄賞(中学生の部)の矢吹中3年橋本綺羅さん(15)の「災害から見えたもの」は、震災支援の恩返しを込めた。
 辛い時こそ 苦しい時こそ 大変な時こそ 助けあう精神 たくさんのことを学ばされた
(角田支局・会田正宣)
=第8部は3月下旬掲載

[大滝清雄]1914〜98年。中国戦線に従軍し、戦闘で負傷。戦友の霊にささげる「黄風抄」(42年)が日本詩壇詩集賞を受賞した。「ラインの神話」(82年)で日本詩人クラブ賞。日本現代詩人会先達詩人に顕彰された。栃木県足利市で死去。


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2019年03月16日土曜日


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