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<震災8年>被災3県観光業、なお回復せず 訪日客の沿岸波及が鍵

松島湾に面した大高森観光ホテル。目の前の海岸が復興事業の拠点となった

 東日本大震災で津波被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸で観光客数の回復が進んでいない。集客施設の整備が遅れ、作業員やボランティアらの復興需要も落ち着いた。震災から8年がたち、東北を訪れる訪日外国人旅行者(インバウンド)は急増している。内陸部の観光地で高まるインバウンド効果を、どう沿岸部にも波及させるかが問われている。(報道部・保科暁史)

 玄関先の海岸が堤防整備や農地復旧工事の資材運搬の基地港となり、6年以上が過ぎた。今も重機が土砂をかき上げ、トラックが頻繁に出入りする。

<復興需要が減少>
 「これでは観光客は戻らない」。東松島市宮戸の大高森観光ホテルの前社長桜井邦夫さん(83)が苦笑する。
 宮戸地区は津波で壊滅的な被害を受けたが、内湾に位置するホテルは被害が小さかった。2011年5月から作業員を受け入れ、ボランティアの拠点にもなって激減した観光客の穴を埋めた。
 復興需要が緩やかに減少したのと反比例し、観光施設は震災前の姿を次第に取り戻した。名所の嵯峨渓の遊覧船は再開し、農林水産業体験などの多目的施設が開業。それでも宿泊客は震災前の5割しか戻らない。
 宮城県によると、観光客入り込み数は県全体では17年に震災前を初めて上回ったが、東松島市は10年比で61.2%にとどまるなど沿岸自治体の大半は震災前を下回る。岩手も沿岸エリアが66.8%、福島の浜通り地方も68.2%までしか回復していない。

<平日でも満室に>
 一方、内陸の主要観光地やスキーリゾートではインバウンドの足音が力強さを増している。
 安比高原(岩手県八幡平市)のホテルに今季(18年12月〜19年3月)宿泊した外国人は延べ約4万人に達し、2シーズン前の約1万5000人より大幅に増える見込みだ。花巻空港の上海線が1月30日に就航したこともあり、2月上旬の春節(中国の旧正月)は中国人客が詰め掛け、平日でもホテルの計約1000室が満室近くになった。
 運営する岩手ホテルアンドリゾート(盛岡市)は新雪が楽しめるコースの拡大や物販エリアの改修など受け入れ環境を強化する。担当者は「外国人客は冬季の宿泊者の3割を占める。花巻空港の上海線、台北線を生かし、さらに取り込みたい」と語る。
 東北の外国人延べ宿泊者数は15年以降、さらに伸び幅が拡大。17年には全6県で震災前を上回った。18年も前年比26%増で、全国10ブロックで伸び率が最も高かった。
 インバウンドの流れを沿岸部にも呼び込もうと、交通インフラや観光施設の整備が徐々に進む。大高森観光ホテルの近くには18年10月、韓国版トレッキング「オルレ」のコースがオープンした。桜井さんは「受け入れ態勢をつくれば外国からのお客さまも増えるかもしれない」と期待する。
 東北観光推進機構の紺野純一専務理事推進本部長は「三陸鉄道リアス線の開業や三陸沿岸道の延伸など、沿岸部でも観光に必要なインフラがようやくそろってきた。震災遺構や教訓は重要な誘客ツールになる。教育旅行の誘致にも積極的に取り組む」と意気込む。


2019年03月16日土曜日


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