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<縮小の先へ 被災地と人口減>第3部 インフラ 水道/給水量減 迫られる選択

国費で新設された宮ケ崎地区の配水施設。人口減の影響が読めず、給水見通しは不透明だ=宮城県女川町

 東日本大震災の被災地で、住民の生活に欠かせない交通機関や公共施設の復旧復興が急ピッチで進められている。将来に向けて維持できるのか。利活用は計画通りに進むのか。加速する人口減少を前に、被災地の試行錯誤が続く。第3部は「インフラ」をキーワードに課題に向き合う姿を追った。

 山を切り開いた高台の一画に真新しいタンク2基がそびえ立つ。宮城県女川町の宮ケ崎地区に昨年春に完成した配水施設だ。標高80メートルから高低差を利用し、新しい街の約200世帯に飲み水を送る。

<値上げ回避模索>
 町が2013年3月に着手した水道の復旧事業は、今年2月時点で約60%まで進んだ。国費147億円を投じ、送水管95キロや配水施設の新設などを進めるが、同町建設課の木村司主幹は「将来の給水量の見通しが立っていない」と危機感を強める。
 15年国勢調査によると、町人口は6334。震災前の10年に比べ3717人(37.0%)も減った。地域の経済活動を支え、水道の大口利用者だった水産加工場は震災前の約6割の26カ所にとどまり、かつての活況には程遠い。
 東日本大震災で加速した人口減少と経済規模の縮小が、町の水道経営を圧迫する。
 一般的な家庭の1カ月分の水道料金は震災前に990円(10立方メートル)だったが、17年4月には1230円に跳ね上がった。上昇率24.2%は、比較可能な県内33の水道事業者の中で2番目に高い。
 17年度の水道水原価は1立方メートル当たり273.9円。そのうち料金収入で賄えたのは約4割の117.2円にすぎない。赤字額156.7円は水道復旧工事で発生した消費税の還付分で穴埋めした。
 高い水道料金は復興の足かせになる。木村さんは「これ以上、単純に値上げするわけにはいかない」と苦しい胸の内を明かす。
 厳しい状況は都市部も例外ではない。

<民間委託に懸念>
 死亡数が出生数を上回る自然減を2年連続で記録した仙台市。水需要は今後30年間で1割減る見通しだ。このままでは現行の料金体系を維持するのは難しいとして、市水道局は「人口減を前提とした料金体系を検討する必要がある」と説明する。
 「コスト削減で生じた利益は水道料金の上昇を抑制することで県民に還元する。県民の利益を最優先する」。宮城県の村井嘉浩知事は先月22日の県議会本会議で言い切った。
 厳しい水道経営を改善する切り札として、県は施設の運営権を設定し民間に委ねる「コンセッション方式」の導入を目指す。施設や電気設備などの維持管理に民間のノウハウを活用し、料金の上昇幅を抑えるのが狙いだ。
 昨年12月に水道法が改正され、コンセッション方式の導入が可能になったものの、検討しているのは全国で宮城のみ。県企業局は準備を加速させるが、災害時の対応や水道事業を民間に委ねることへの懸念は消えない。
 海外では水道事業の民営化後、料金高騰などで再び公営化した例が相次ぐ。水問題に詳しいジャーナリスト橋本淳司氏によると、その数は16年までにパリやベルリンなど少なくとも33カ国267都市に上る。
 命の水をどうするか。人口減で苦境に立たされた自治体が、各地で厳しい選択を迫られている。


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2019年03月17日日曜日


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