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<縮小の先へ 被災地と人口減>第3部 インフラ 土地区画整理/空き地解消 地域で格差

住宅再建が進む一方で、空き地も目立つ岩手県大槌町中心部

 東日本大震災の被災地で、住民の生活に欠かせない交通機関や公共施設の復旧復興が急ピッチで進められている。将来に向けて維持できるのか。利活用は計画通りに進むのか。加速する人口減少を前に、被災地の試行錯誤が続く。第3部は「インフラ」をキーワードに課題に向き合う姿を追った。

 国費約150億円を投じて造り上げた新たな市街地に、多くの空き地が広がる。
 岩手県大槌町中心部の町方地区は東日本大震災の津波と火災で壊滅した。現地に自宅を再建したNPO法人理事長臼沢良一さん(70)は「震災前は家が立ち並び、外を歩けば知り合いが何人もいたのに」と嘆く。

<戻らない地権者>
 町は土地区画整理事業で町方に30ヘクタールの平地を整備。2018年7月時点で、宅地用510区画の半数超が明確な利用策が決まっていなかった。造成に時間がかかった上、津波浸水域であることが地権者が戻らない理由とみられる。
 町方には震災前、約4000人が暮らしていた。災害公営住宅を含めた2100という町の計画人口に対し、居住者は1107人にとどまる見込みだ。
 帰還を促進するため、町は宅地引き渡し後に2年以内に家を建てた場合、100万円を支給する制度を設けた。18年7月時点で町方の完成・着工済みの住宅は142戸となり、前年同期比で約2倍となった。
 ただ、カンフル剤の効果は一時的だった。1年前はあちこちで見られた住宅の新築風景は、今では数えるほど。地権者と購入希望者らをマッチングする「空き地バンク」に今年1月現在、57カ所の土地が登録されたものの、空き地解消の決定打にはなっていない。
 町総合政策課の藤原淳課長は「人口減少が進み、土地の需要が今後増える見込みは低い。巨費を投じたのに歯がゆい」と表情を曇らせる。
 土地区画整理事業は、地権者の合意に基づき土地の区画を整える再開発の手法だ。被災地では市街地の整備を目的に適用された。

<好立地 4社進出>
 岩手、宮城、福島の被災3県では計50地区で計画され、現時点で国費約4200億円が投入される予定だ。35地区で造成が終わったものの、人口の集積度や利便性が明暗を分ける。
 津波で多数の漁船が打ち上げられた気仙沼市鹿折地区では、宅地や商工業用地547区画が整備される予定で、マッチングを図るエントリー制度に153区画(2月現在)が登録された。飲食店やドラッグストアが並び、新市街地の形が徐々に見えてきたが、6割近い約90区画は利用の見通しが立っていない。
 地元の不動産業藤野愛一郎さん(65)は「宅地の復興需要は3年ほど前に落ち着いた。資材や人件費が高騰し、土地を購入してまで住宅を新築する意欲がある住民は少ない」と説明する。
 一方、名取市閖上東地区は企業の注目を集める。
 市は土地区画整理事業で産業用地15ヘクタールを造成した。昨年12月に4区画で進出企業を公募したところ、2月中旬までに食品製造業など4社の進出が決まった。
 今月末に開通する市道を通れば、仙台東部道路名取インターチェンジまで約3分。人口108万の仙台市に隣接し、仙台空港まで5キロという立地が強みだ。
 山田司郎市長は「交通アクセスの良さが好評だ。閖上に新たな街ができつつある状況を見て、企業は津波被災地であることを気にしなくなっている」とトップセールスに自信を深める。
 震災で人口減少に拍車が掛かった三陸沿岸の被災地と、逆に人口集積が進む都市部の被災地。復興の格差が広がり続ける。


2019年03月18日月曜日


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