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<震災8年>融資頼らぬ経営探る 原発事故被災地の金融機関、難しい店舗運営強いられる

あぶくま信金浪江支店前で事業への抱負を語る森川支店長=福島県浪江町

 東京電力福島第1原発事故の影響が続く福島県沿岸部で、地域金融機関は難しい店舗運営を強いられている。帰還困難区域を除き避難指示はほぼ解除されたが、住民の帰還や産業再生は緒に就いたばかり。預金を集めて融資する従来のビジネスモデルは成り立たない。効率化を探り、被災地の再生に存在意義を求める現地支店は、人口減少に直面する地域金融機関の未来を先取りした姿とも言える。(報道部・高橋一樹)

 あぶくま信用金庫(南相馬市)は2016年7月、住民の帰還開始に先駆けて浪江町の支店を再開した。17年3月に帰還が始まったが、18年2月時点の町内居住人口は910人で、総人口の約5%にとどまる。
 森川永一支店長は「飲食店が開業し、活気は少しずつ出ている」と町に希望を見いだす一方、「支店では個人預金が目減りしているのが気掛かり」と明かす。
 浜通りが主要営業エリアのあぶくま信金は原発事故直後、東電から被災者への賠償金で預金は膨らんだ。近年は若い層が移住や相続をきっかけに、預金を他の金融機関に移すケースが目立ってきたという。帰還の遅れは、そのまま信金の体力低下に直結する。
 原発事故後、県内の沿岸被災地で金融機関のほとんどの支店が休業した。避難指示の解除が進み、多くは営業を再開したが、業務の効率化は避けて通れない。
 福島銀行は富岡支店(富岡町)の営業を17年3月に始めたものの、営業人員を原発事故前の9人から3人に減らした。本店との遠隔相談システムを導入するなど、少人数での顧客対応に苦心する。
 日中の窓口休業も相次ぐ。あぶくま信金は浪江、富岡の両支店、大東銀行(郡山市)は富岡支店で既に導入した。東邦銀行も1月から浪江、富岡、小高(南相馬市)の3支店に導入した。
 あぶくま信金は、職員が避難や移住をして約50人減った。本店の担当者は「窓口休業などの効率化で職員の負担を減らし、対応できた」と説明する。
 融資先の事業再生は、これからが正念場となる。
 帝国データバンクによると、県内の旧避難区域に本社があった1205社のうち、休廃業は2月時点で739社(61.3%)に上った。いったんは再開したが、後継者難などで継続を断念したケースもある。金融機関による幅広い支援の重要性が高まっている。
 全町の避難指示が15年9月に解除された楢葉町。18年までに帰還率が5割を超え、事業再開や工業団地への企業進出が徐々に進む。町で唯一営業する東邦銀行楢葉支店は、原発事故前を上回る1日70人ほどの来客があるという。
 ただ、事業を再開した企業はグループ化補助金などを使うため、資金需要はそれほど多くない。平河内保明支店長は「融資には頼らず、事業承継や販路の支援など事業者の経営課題を解決し、町の復興を後押ししたい」と強調する。


2019年03月19日火曜日


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