岩手のニュース

<三鉄リアス線23日開業・つながる鉄路>(2)震災を超えて/防災 復興の姿伝える

23日に開館する「いのちをつなぐ未来館」を案内する伊藤さん

 北から南まで163キロ。岩手の海岸線が1本のレールで結ばれる。JR東日本から移管される山田線の宮古−釜石間(55.4キロ)が南、北リアス線をつなぎ、第三セクター三陸鉄道(宮古市)のリアス線が23日開業する。東日本大震災から8年。三陸の浜に復興の笛が響く。

 あの日の釜石市鵜住居地区では、明と暗、二つの現実が同時進行していた。
 日頃から防災教育に力を入れていた釜石東中の生徒と鵜住居小の児童は自分の判断で高台へと避難した。
 だが、小中学校から400メートルしか離れていない鵜住居地区防災センターでは、東日本大震災の津波に巻き込まれて160人以上が犠牲になった。

<走って避難体験>
 「津波を人ごとと考えていた自分の後悔を、次世代で繰り返してほしくない」。地元の一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校代表理事の伊藤聡さん(39)が言う。
 盛(大船渡市)−久慈間の163キロを結ぶ三陸鉄道リアス線の鵜住居駅前に23日、津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」が開館する。伊藤さんも運営に協力する一人だ。
 展示物を見学するだけでなく、来場者が児童生徒が避難したルートを実際に走ってみる。体験型プログラムを用意して津波防災への理解を深めてもらう。
 「未来館を核に、鵜住居を『生きる力』を学べる場所として発信したい」と伊藤さん。リアス線が人々をいざなってくれることを期待する。

<人が集う場所に>
 三陸鉄道に移管されるJR山田線区間の駅舎は多くが津波で全壊した。岩手県大槌町の大槌駅も、その一つ。再建された駅舎は、ひょうたん形の屋根がトレードマークだ。
 NHK人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルとされる島が大槌湾にあることにちなんだ駅舎内の一角に23日、小さなラーメン店がのれんを掲げる。
 店を切り盛りする菊池晃総(あきふさ)さん(39)の本業は理容師。震災後、友人たちと「ラーメン研究会」を結成し「大槌ならではのラーメンを作りたい」と試行錯誤を重ねてきた。
 だしには町特産のサケを使う。県内の有名店のジェラートを販売するほか、夜は居酒屋として幅広い世代が集う店を目指す。
 町は人口減少に直面している。再建した理容店も続ける予定だが、前途は容易に見通せない。それでも観光客や町民が集まる駅の復活を、菊池さんは「また一つ明かりのともる建物ができた」と喜ぶ。
 1杯のラーメンに、震災後に受けた支援への感謝も込める。「町を活気づけたい。復興した姿を多くの人に見てほしい」。駅舎の片隅で、町に降り立つ人々を出迎える。(釜石支局・東野滋)


2019年03月20日水曜日


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