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<地上イージス・進む配備の動き>[1]首長の思惑(上)秋田・判断先送り住民不安

東北防衛局長から現地調査の説明を受ける穂積市長(右)と石井周悦副市長。穂積市長は計画に対する賛否を今も明らかにしていない=1月28日、秋田市役所

 弾道ミサイル防衛強化を目的に、政府が導入する地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。防衛省は配備候補地の陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)、むつみ演習場(山口県萩市、阿武町)の両周辺地域で説明会を繰り返したが、住民理解は進んでいない。一方で地上イージス2基の取得経費が一部予算計上され、年度内に配備地としての適否を判断する調査が終わる。国内初の恒久的なミサイル基地を巡る次の具体的な動きを新年度に控え、候補地の今を中国新聞と共同で報告する。
(河北新報秋田総局・渡辺晋輔、中国新聞防長本社・和多正憲)=4回続き

 「『反対』と言わなければ『賛成』と捉えられるのは心外だ」

<国の調査待ち>
 2月28日にあった秋田市議会2月定例会の代表質問で、穂積志市長は一瞬、語気を強めた。昨年秋、配備反対をいち早く表明した山口県阿武町長を引き合いに出した市議から、「そろそろ腹をくくった言葉を出すべきだ」と迫られたからだ。
 それでも「適地かどうかを判断する調査の最中で、配備しないこともあり得る。国の説明がない段階で判断できない」と従来の答弁を繰り返し、賛否には触れなかった。
 新屋演習場は住宅密集地の新屋勝平地区=?=に隣接する上、面積は約1平方キロとごく狭い。地元住民は地上イージスのレーダーが出す電磁波による健康被害を懸念するほか、攻撃対象になることへの不安を抱く。
 防衛省は電磁波の影響などを調べ、新年度に結果を報告する。市は、調査結果を独自検証して警備面などの安全対策を見極め、議会の意見を参考に判断することになる。穂積市長は疑問点があれば問いただすとしており、判断には時間がかかりそうだ。

<手遅れを危惧>
 秋田県の佐竹敬久知事の姿勢も穂積市長と相似形に映る。搭載される最新レーダー「SSR」の配備に数年を要するため、「地上イージスのシステム全体を整備するまでに、知事選が2回ある」との見通しを今月7日の記者会見で語った。
 保安距離と緩衝地帯の確保が必要だとして「新屋演習場に全て収めるのは難しい」との見解を示す一方、「国会で導入が決まったのを具体策が出る前に頭から否定できない」とも。
 今後、配備計画の全体像を把握してから議論する構えの佐竹知事。近々に賛否を明らかにする気配は感じられない。
 しかし調査着手で関連予算執行が始まり、2基の取得経費1757億円が政府の新年度予算案に計上された。昨年5月、小野寺五典防衛相(当時)が秋田、山口両県を候補地に挙げてから10カ月。肝心の配備地が決まらないまま国の動きは着実に進む。
 国の出方を待つかのように判断を先送りにする首長たちの姿勢に、一部の県議や市議からは「手遅れにならないのか」と焦りの声が漏れる。
 配備に反対する県議は計画の背後に国の強い意志を感じ取る。「現時点で反対姿勢を示し、後で安全安心につながる対策が出てくれば解除すればいい。首長がいまだに態度を留保しているのは、政治のリスク管理として失敗だ」と批判する。

[新屋勝平地区]16町内会でつくる新屋勝平地区振興会によると、約5400世帯、約1万3000人が暮らし、商業高校や小中学校がある。振興会は昨年7月、地上イージス配備計画への反対を決議。11月には秋田市議会に計画撤回の決議を求める請願を出した。


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2019年03月19日火曜日


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