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<高校山岳部は今>(上)廃部/安全確保へ高まる要望

積雪期登山の訓練をする酒田西高山岳部員ら=2018年12月、鳥海山

 アウトドア人気と登山事故への懸念のはざまで、高校山岳界が揺れている。非日常にあこがれる高校生の感性にマッチして少子化の中で部員数を増やす一方、2017年に栃木県で起きた雪崩事故のように安全面への不安などから廃部になる例も少なくない。山形、秋田県境の鳥海山(2236メートル)を拠点に独特の登山文化を育んできた酒田市周辺の高校山岳部の今を取材した。(酒田支局・菊間深哉)

 東北有数の名峰、鳥海山の麓でまた一つ、高校山岳部の灯が消える。

<「自然を学べる」>
 山形県酒田西高山岳部は今年夏、在籍中の2年生男子部員3人の引退と同時に廃部になる。飽海地区に1960年代から90年代にかけて公立、私立合わせ10校にあった山岳部。それが県立の酒田東、酒田光陵の2校だけになる。
 ピッケルやアイゼン、かんじき…。酒田西高山岳部の部室には歴代の部員が使い込んだ装備が並ぶ。古い白黒写真も時折見つかる。
 「昔は活気があったんだなと思う。共有の装備も分担して背負ってもらえるし、後輩は欲しかった」と話すのは渡辺樹部長(17)。入部には当初、親が心配したというが、「普段できないことを山で味わえる。調理や風土、自然を学べるのが楽しい」と強調する。
 鳥海山周辺の山岳界で高校生や学校の顧問は長く一大勢力を誇った。50年代後半からまだ修験道や炭焼きの雰囲気の残る鳥海山に挑み、ルート開拓や山小屋建設を先導した。若者のアウトドア人気のさなか、その山岳部が2000年前後から廃部が相次ぐのは皮肉な話だ。
 県高体連登山専門部委員長で酒田東高山岳部顧問の近野匡生教諭(44)は「気軽に山に行く若者が増える一方で、昔はなかったような異常気象が頻発する。社会が高校山岳部に求める安全性のハードルは高くなっている」と指摘する。
 17年3月には栃木県那須町で登山講習中の高校生ら8人が雪崩で死亡し、高校生の冬山登山の是非を巡る議論が再燃した。酒田市周辺の飽海地区でも原則全ての高校山岳部が1967年から毎年12月、鳥海山で共同実施してきた「積雪期登山基礎技術講習会」が、17年には悪天候を理由に初めて中止になった。
 県内のある高校山岳部顧問経験者は「学校の管理職や県教委は事故を恐れ、保護者も子どもの入山を不安がる。必要以上に山岳部の活動を危険視しているように感じる」と打ち明ける。

<難しい後釜探し>
 山岳部の減少は顧問のなり手不足などの負の連鎖も招く。かつて飽海地区で10校の20人以上が高校の枠を超えて技能を伝え合った顧問団は今は3校の7人だけ。顧問が転勤すると登山未経験者から後釜を探すのは難しく、少子化に伴う部活動数の削減対象に山岳部が挙がりがちな一因になる。
 酒田西高などで山岳部顧問を長く務めた県鶴岡中央高の河口昭俊教頭(59)は「昔よりも教員は忙しく、余裕もなくなってきているが、生徒の命を預かってでも、生徒に伝えてあげられる教育的効果が山にはあると信じている」と話す。


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2019年03月21日木曜日


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