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<阿武隈川物語>(39)祭りや滑空場に活用

阿武隈川河川敷の菜の花畑でポニーに乗る子ども=2018年4月、宮城県角田市
角田滑空場を飛び立つグライダー

 人の暮らしは長らく、川の恩恵にあずかるところが多大だった。現代では少し遠くなったようだが、川は人生の折節に、憩いと潤いをもたらしてくれる場でもある。水辺に親しんで生きる阿武隈川流域の人々の思いに触れた。(角田支局・会田正宣)

◎第8部 水辺で(2)河川敷

 宮城県角田市は間もなく春本番だ。阿武隈川東岸の河川敷約3.2ヘクタールに250万本が咲き競う「かくだ菜の花まつり」が、4月28日の開催まで1カ月に迫った。

<環境教育に有効>
 国と市、観光団体が河川敷を有効活用しようと1997年に始めた。地元の風呂青年会が中核を担う。秋に菜の花の種をまき、花が散った後に3回、トラクターですき込む。佐藤竜治会長(43)は「会員10人とOBで手分けして作業する。青年会のメインイベントだ」と胸を張る。
 米と大豆の生産農家の佐藤さんは、阿武隈川の水を耕作に利用する。「昨年は秋に台風が来て表土が流され、花がまばらになった。今年はちゃんと咲いてほしい」と心待ちにする。
 約3キロ上流の枝野地区でも菜の花プロジェクトがある。耕作放棄地だった河川敷の約7ヘクタールに菜の花を植え、菜種油を生産している。
 循環型社会を目指す全国運動に共感した市内のエコショップが、2006年に始めた。地元の枝野7区資源保全隊が継承している。
 当初から中心になって取り組む前隊長の高橋達征さん(76)は「児童が種まきや刈り取りに参加してくれ、環境教育につながっている。次世代につなげたい」と目を細める。

<宇宙ともマッチ>
 佐倉地区の河川敷にある角田滑空場から、グライダーがぐんぐん飛翔(ひしょう)する。
 市内のグライダーパイロット斎藤岳志さん(46)は「グライダー飛行にとって、角田は世界的にも恵まれた場所」と力説する。蔵王連峰からの西風と、太平洋から阿武隈山地に吹く海風がぶつかり、「山岳波」と呼ばれるよい上昇気流が生まれるのだ。
 斎藤さんは15年5月、角田発着で750キロ飛行し、日本・アジア記録を樹立した。「滑空場は長くて広い空間が必要。阿武隈川がなければ、角田でグライダーはできない」と感謝する。
 斎藤さんがもう一つ感謝するのが、地域の支援だ。滑空場は市商工会青年部が中心になって誘致した。かつてグライダーによるまちおこしイベントも行われ、エアレース世界選手権に参戦する室屋義秀さん(福島市)が参加したこともある。
 推進役の市商工会副会長で、市民団体「スカイネット角田」代表理事の佐藤忠義さん(57)は「角田には宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット関連施設があり、宇宙とグライダーはよい組み合わせ。子どもに夢を与えられるまちづくりの資源だ」と語る。
 角田には脈々と、河川敷を生かすべく知恵を絞ってきた伝統がある。

[角田滑空場]滑走路は1000メートル。宮城県航空協会が河川法に基づく河川敷の占用許可手続きを行い、1999年から使用。角田市の総合型地域スポーツクラブ「スポーツコミュニケーション・かくだ」などの主催で小中学生向けグライダー教室を開いている。


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2019年03月28日木曜日


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