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復活の和太鼓町民を元気に 心通わせ半年で大舞台 福島・富岡中生6人

富岡太鼓まつりで演奏を披露する富岡中の6人=2月24日、福島県富岡町

 福島県富岡町の富岡中で、伝統の和太鼓演奏が復活した。東京電力福島第1原発事故に伴う避難を経て、昨年春に地元で授業を再開した。昨年9月の練習開始から半年。この3月に巣立った3年生2人を含む生徒6人は、晴れやかな表情で大舞台も経験した。

<榎内さんが打診>
 「セイ!」。1人が掛け声を上げると、「ヤッ!」と他の5人が間髪入れずに応えた。
 町内で2月24日にあった富岡太鼓まつり。聴衆約500人の本格的な舞台で、6人はオリジナル曲「つながり」を披露した。
 軽快な小太鼓に、大太鼓の音がずしりと重なる。いよいよヤマ場。3人が並び合う4台の中太鼓をたたく。息はぴったり。最後に6人は「ヤー」とばちを突き上げて笑顔で締めた。
 子どもたちの太鼓は盆踊りの恒例行事だった。元東電社員の榎内(えのきうち)正和さん(60)が25年以上にわたって指導。2001年には教え子たちと「小浜風童太鼓(こばまふうどうだいこ)」を結成し、活動はますます盛んになった。
 ところが、東日本大震災の津波で榎内さんらの太鼓と楽譜は流され、原発事故でメンバーも子どもたちも避難を余儀なくされた。
 帰還困難区域を除く富岡町の避難指示解除から1年。地元で授業が再開されると、榎内さんは太鼓復活を学校に打診した。その時点で生徒は3人しかおらず、活動に至らなかった。
 復活が決まったのは2学期。体調不良だった1人が通学を再開し、避難先からきょうだい2人が戻った。
 ただ学校には太鼓がない。6人は水曜の放課後、榎内さんらが避難先のいわき市から持ち込む太鼓を懸命にたたいた。それ以外は段ボールをたたき、手にまめを作って練習した。
 「えのちゃん」と慕われる榎内さんは子どもたちに応えた。「家族や先生、仲間、地域の人たちとのつながりを大事にしてほしい」と願い込めて作ったのがオリジナル曲だった。
 初披露となった11月10日の学習発表会。学校の先生たちは「みんなの太鼓が町民を元気にしてくれた」とたたえた。
 目の色を変えて臨んだ2月の太鼓まつりに続き、今月13日の卒業式でも立派な演奏を見せつけた。

<今年こそ盆太鼓>
 卒業した小坂綸(こさかりん)さん(15)と三瓶水香(さんぺいみずか)さん(15)は今春、ふたば未来学園高(福島県広野町)に進む。共に小浜風童太鼓のメンバーとして太鼓を続ける。
 「喜んでくれる人がいると分かって本気になった。さらに上のレベルを求めるようになった」と小坂さん。三瓶さんは「転校してきて不安だったが、練習を通してみんなと心を通わせられた」と語る。
 富岡中は4月、新入生6人を迎える。その一人、渡辺慶介君(12)は「僕たちが引き継いでいく」と力を込める。榎内さんは「今年こそ、子どもたちの盆太鼓を復活させたい」と、夏の夜の舞台に立つ生徒たちの勇姿を思い描く。(郡山支局・岩崎かおり)


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2019年03月28日木曜日


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