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東北産食品、輸入規制の壁 アジアへの販路拡大阻む

徹底した品質管理で牛の肥育を行っているうしちゃんファームの農場=5日、宮城県石巻市小船越

 東京電力福島第1原発事故に伴い、諸外国が設定した日本産食品の輸入規制が24の国・地域で続く。政府は2019年の農林水産物・食品の輸出額目標を1兆円とし、東北でも輸出を伸ばす生産者が出てきた。それでも、輸出額が大きいアジア諸国ではなかなか規制が解除されず、海外への販路拡大に壁を感じる事業者もいる。(東京支社・小木曽崇)

 岩手、宮城両県を拠点に和牛を生産する農業生産法人「うしちゃんファーム」(宮城県石巻市)は15年、輸出を始めた。現在はベトナム、タイ、シンガポールなど東南アジアを中心に年間1億円以上を売り上げる。
 各国を飛び回る佐藤一貴社長は「世界の牛肉需要は増えている。規制がなくなれば国産牛肉の輸出はもっと伸びる」と見通す。
 輸出をてこに成長する企業がある一方、輸入規制を依然として大きな障害と捉える企業は多い。
 センコン物流(名取市)は18年1月、マカオ向けに仙台牛の輸出を始めた。久保田晴夫会長にとっては、うれしさと悔しさが相半ばする「再出発」だった。
 同社は東日本大震災があった11年3月、マカオへの本格輸出に乗り出した。原発事故が起きた時、約3トンの仙台牛を積んだコンテナ船は洋上にあった。肉は事故前に解体処理されて安全だったが、取引先は「販売できない」と突き返してきた。
 今でこそマカオでは和牛が人気だが、8年前は輸出する産地は他になかった。現地での知名度やシェアといった先行利益を生み出せず、輸出が途絶えた7年間に得られたはずの利益は補償されなかった。
 宮城県産食肉の輸入停止措置は12年に解けたものの、放射性物質検査報告書の添付が条件。同社担当者は「事故前は必要なかった書類をそろえるのは手間。コストや時間が余計かかり、他の輸出国に比べるとハンディだ」と明かす。
 マカオでは昨年、香港に通じる海上橋が開通した。久保田会長は巨大市場に再び挑むが「制度として規制がなくなった国でも人々には心理的な壁が残る」と不安を隠さない。
 宮城県産牛肉は書類を整えれば中国以外にも輸出できる。福島県産は中国に加え台湾、マカオでも輸入停止措置を受ける。現状では緩和の兆しは見られない。
 福島県農産物流通課の担当者は「政府に輸入規制緩和に向けた取り組み強化を働き掛けている。県としても規制を続ける国に安全であることを積極的に発信する」と話す。

[日本産食品の輸入規制]東京電力福島第1原発事故後、最大で54の国・地域が実施。農林水産省によると3月1日現在、完全撤廃したのはカナダ、豪州、タイ、ブラジルなど30カ国。15カ国は放射性物質検査証明書などの添付を求めイスラエルは自国検査を強化する。一部都県を対象に輸入停止を続けるのは8カ国。内訳は2017年に日本の国・地域別輸出額がトップだった香港、2〜5位の米国、中国、台湾、韓国。さらに8位のシンガポール、10位のフィリピン、23位のマカオ。


2019年03月28日木曜日


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