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<国立大教授定年>学究の道終わりなし 東北大大学院医学系研究科・賀来満夫教授(65)

 東北の国立大で研究や教育に携わった多くの教授が31日、定年を迎える。東北大大学院医学系研究科の賀来満夫教授に長年の取り組みを振り返ってもらった。

◎社会の輪でリスク低減 

 東北大に赴任した1999年から感染症対策のシステム作りに取り組んだ。大学、地域の医療機関、行政、企業、学校、市民が連携して感染症制御に当たる「ソシアルネットワーク」を推進してきた。
 宮城県内の拠点病院に呼び掛け、それまで病院ごとに行っていた感染症対策を、巡回や研修会、相談窓口を通じて地域全体で実施するネットワーク組織を作った。2005年には東北全域に組織が広がり、全国的なモデルになった。啓発にも力を入れ、各地の小学校で出前授業を開いている。
 「人類、動物、微生物など、全ては関わり合いながら生きている」との見地から、「グローバル化が進んだ現代社会では感染症の正しい情報を共有することが大切だ」と強調する。
 新型インフルエンザが大流行した09年、仙台市と市医師会、大学が協力し、症状に応じて患者を受け入れる「仙台方式」を実施。一部の医療機関に患者が集中するのを防いだ。
 感染症リスクが高まった東日本大震災では30カ所以上の避難所を巡回した。トイレの使い方や手洗い方法などを分かりやすく記したマニュアルは、後々の災害でも生かされた。
 薬剤師だった母親の影響で医師を志した。「苦しむ人を救いたい」という思いは、医師になってさらに強まった。
 国際協力で訪れたケニアでコレラが集団発生。その後も腸管出血性大腸菌O157、重症急性呼吸器症候群(SARS)、薬剤耐性菌の増加など新たな感染症の脅威が国内外で起き、いずれの局面でも対応に奔走した。
 4月に東北医科薬科大(仙台市青葉区)の特任教授に就き、ソシアルネットワークのさらなる強化を図る。これまで仙台で10回開催した「J感染制御ネットワークフォーラム」も内容を充実させる予定だ。
 「感染症のリスクをどうすれば下げられるかを市民と一緒に考えたい。社会を構成する人たちが真に連携することが一番のワクチンになる」との信念を貫く。

[かく・みつお]53年大分県生まれ。長崎大大学院医学研究科博士課程修了。長崎大病院講師、聖マリアンナ医科大助教授を経て、99年から現職。日本環境感染学会理事長、日本臨床微生物学会理事長を務める。


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2019年03月31日日曜日


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