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防災集団移転団地に夢の居酒屋 南三陸の三浦さん、火災と震災乗り越え開店

笑顔で客に酒を手渡す三浦さん

 東日本大震災後に宮城県南三陸町志津川に造成された防災集団移転団地で、初めての居酒屋「鷲巣(イーグルス)」が開店した。店主の三浦達也さん(51)は家族で営んでいたクリーニング店を襲った火災と震災の2度の災害を乗り越え、温めていた夢をかなえた。「町の人たちが楽しく酒を飲み、気晴らしできる場所にしたい」。新たな商売で町を盛り上げる決意だ。
 居酒屋は同町志津川の高台に140区画が整備された東団地に立つ。3日夜、店先の赤ちょうちんに明かりがともると、開店を待ちわびた町民が訪れ、店内はにぎやかな笑い声に包まれた。
 三浦さんはプロ野球東北楽天のファンで、町の応援協議会のメンバー。店の入り口に掲げたのれん、仕事着の作務衣(さむえ)の色はチームカラーのクリムゾンレッドにした。
 「ファンが集まれる店が町になかった。試合がある日は、みんなでテレビ中継を見ながら応援したい」。この日、夜のニュース番組でチームの勝利が報じられると、客との野球談議に花が咲いた。
 志津川の十日町地区で家族で営んでいたクリーニング店が2005年に火災で焼失。翌年に再建したものの、震災の津波で自宅を兼ねた店舗を再び失った。自宅にいた母も帰らぬ人となった。
 子どもの頃から仕事で忙しい両親に代わり、食事を作ることもあった。料理が得意だった三浦さんに、震災前年に病気で亡くなった父は生前、「食べ物屋をやってみたらどうだ」と勧めていたという。
 震災後はクリーニング店の再建を断念し、居酒屋での再出発を決めた。だが、当初は壊滅的な被害を受けた町の先行きが見えなかった。地元の水産加工場や設備管理の仕事などさまざまな職業に就いて食いつないだ。
 「石橋をたたいて渡る性格なので時間がかかってしまった」。17年度に東団地の造成が完了すると、居酒屋開業に向け本格的に動きだした。昨年12月に自宅兼店舗が完成し、仮設住宅の暮らしを終えた。
 カウンター6席、座敷8席のこぢんまりとした店内で、鶏の唐揚げやお好み焼きなど庶民的な料理を手頃な価格で提供する。時季になれば自ら釣った魚を調理し、振る舞うつもりだ。
 「火事の時、震災に遭った今回も周囲の助けに支えられた」。恩返しの気持ちを胸に、居酒屋店主として再起の一歩を踏み出した。


2019年04月10日水曜日


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