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<いわてを考える>第4部・県内格差(1)負の連鎖/止まらぬ県北の人口減

生徒数の減少で閉校した二戸市の御返地中

 広大な面積を有する岩手県で「県土の均衡ある発展」は実現可能なのか。県内各地に横たわる「格差」を考える。(第4部は5回続き)

<沿岸部に肉薄>
 岩手県二戸市の御返地(ごへんち)中が今春、72年の歴史に幕を下ろした。1960年代には300人以上が在籍していたが、学校最後の生徒は22人にまで減少。近隣の中学へ統合が決まった。
 取り立てて産業のない二戸市御返地地区で、開校当時の校長は「人づくりを御返地の産業に」と提唱したものの、人口減少に歯止めはかからなかった。
 人口流出の要因を御返地中OBで閉校事業実行委員長の田口進さん(78)は「都会との賃金の差」と指摘する。「市内に大手企業はなく、都会に出て行った若者は帰ってこない。結果、過疎がどんどん進む」
 2016年度の全県の年間平均所得が273万7000円だったのに対し、二戸など8市町村で構成する県北地域は260万1000円にとどまった。
 県北に立地する企業はブロイラー飼育、縫製工場など低賃金を前提とする労働集約型産業が多く、所得は構造的に低くならざるを得ない。いきおい、所得を求めて他地域への流出が続く。
 15年の県北の人口は11万5007。10年間の減少率は12.9%で、東日本大震災で被災した沿岸の15.4%に肉薄する。
 市町村も手をこまねいていたわけではなかった。1991年には県北5市町村が地域振興の連携組織「カシオペア連邦」を設立。独立国家を模したイベントの開催などで一時期、話題を集めもしたが、負の連鎖を断ち切るには至らなかった。

<自然エネ着目>
 こうした現状を踏まえて県は、新総合計画(2019〜28年度)に県北振興を重要課題に掲げた。藤原淳二戸市長も「所得を一気に上げることは現実的に難しい。中山間地で生きていく励みになるような旗印を示してほしい」と訴える。
 県北振興の「旗印」の一つが、一戸町で18年1月に稼働した県の高森高原風力発電所。最大出力2万5300キロワットは、公営風力発電所では全国最大規模だ。
 新総合計画で県は、豊かな自然エネルギー資源に着目した地域振興策「北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクト」を推し進める。東京電力福島第1原発事故を転機として内外に新たな価値を発進しようと、県北地域の模索が続く。


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2019年04月10日水曜日


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