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<いわてを考える>第4部・県内格差(2)医師の偏在/半数超 盛岡周辺に集中

休診で人けのなくなった奥州市総合水沢病院の小児科待合室

<一歩間違えば>
 2017年1月11日午前9時15分ごろ、岩手県久慈市から岩手県立二戸病院に向かっていた救急車が久慈市大川目町の国道281号でスリップし、前方に停車していたトラックに接触。救急車には出産直前の妊婦が乗っていた−。
 妊婦は別の救急車で二戸病院に運ばれて出産。母子ともに無事だったが、一歩間違っていれば最悪の事態もあり得た。
 事故の背景には、2次医療圏を形成する久慈・二戸地域にあって帝王切開、多胎児などの高リスク出産は二戸病院でしか対応できないという事情があった。
 久慈・二戸地域の産科医は計7人。出産を取り扱えるのは久慈病院と二戸病院に限られ、しかも産科医が1人だけの久慈病院は自然分娩(ぶんべん)にしか対応できない。
 久慈市の会社員三河真知子さん(36)は現在妊娠3カ月。県境を越えて八戸市の病院で出産する予定だ。
 「帝王切開なので、久慈では産めない。二戸は車で1時間以上かかる上、緊急事態になれば、さらに盛岡まで運ばれる可能性もある」と嘆息する。
 県中南部の中核医療を担う奥州市総合水沢病院では18年12月、小児科が休診に追い込まれた。常勤小児科医が退職したためだ。
 補充しようにも県内で最も小児科医が手薄な地域とあって、代わりの人材は見つからない。市医療局は「募集はしているが、再開のめどは立っていない」と頭を抱える。
 厚生労働省は2月、地域人口の年齢構成などを反映させて医師の充足度合いを数値化した医師偏在指標を発表。47都道府県や2次医療圏ごとの順位を示した。
 岩手の医師充足度は全国最下位。医療施設で働く医師2458人のうち半数超の1305人が盛岡周辺に集中しており、偏在が著しい。
命守れぬ現実
 県内で最も医師が不足している宮古周辺は、全国335地域中330位だった。18年度のドクターヘリ出動要請は115回で県内最多。地元の医療機関だけでは住民の命を守れない現実を物語る。
 県は06年度以降、医学部卒業後に県内の公的医療機関で働くことを条件にした奨学金貸与制度を打ち出したが、対策は奏功していない。
 18年度も産科診療所のない市町村で新規開業する産科医に1000万円を助成する制度を創設したものの、応募はなかった。
 県は19年度、助成額を2000万円に倍増するが、久慈市の開業医は「新規開業しようにも緊急搬送先が近くになければ難しい」と県の施策に疑問を投げ掛ける。
 県医療政策室は「医師を増やすのは長い時間がかかる地道な作業。できるものは全て手を付ける」と説明するが、全国最下位を脱する新機軸は見いだせていないのが実情だ。


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2019年04月11日木曜日


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