青森のニュース

<あおもり点検 三村県政16年>(3)観光/訪日客 地域振興のてこ

「たか久」で飲食する中国人観光客。昨年から外国人客が急増し、売り上げが1割以上増えたという=青森市
末永洋一さん

 任期満了に伴う青森県知事選の告示(5月16日)まで1カ月となった。現職の三村申吾氏(63)は県政史上初の5期目を目指す。新人の歯科医佐原若子氏(65)が立候補の意思を固めたことが4月16日分かり、にわかに一騎打ちの構図となる公算が大きくなった。16年にわたる三村県政が抱える課題を、専門家の視点を交え点検した。(青森県知事選取材班、5回続き)

<2年連続トップ>
 「県庁、民間を挙げて努力してきた。エア(航空会社)とも濃い付き合いをしてルートを広げてきた」
 三村申吾青森県知事は3月上旬の定例記者会見で、得意の観光戦略の成果を誇ってみせた。
 各自治体が誘致に血道を上げる訪日外国人旅行者(インバウンド)。県内の外国人宿泊者は2018年、伸び率が2年連続で全国トップとなった。観光庁によると、18年は延べ37万9280人で過去最多を記録し、前年比で45.7%の増加となった。
 今や行政による観光政策、地域振興の成否を握るとも言えるインバウンドの分野で、青森県は勝ち組だ。
 主導したのは三村知事。外国人に高い知名度を誇る北海道との周遊を推進した。函館市など道南地域と県全域を交流圏と位置付け、官民挙げて旅行商品などの販売を後押しした。
 三村知事は海路、空路でも訪れやすくする「立体観光」を掲げ、中国、台湾、香港、韓国を毎年訪問。トップセールスで青森−中国・天津線の開設、青森−ソウル線の増便に結び付けた。外国の大型クルーズ船は18年、東北トップの16隻が寄港した。
 PRのキーワードは青森らしさ。有名な青森ねぶたまつりや弘前公園の桜などだけでなく、観光産業が下火になる冬も、八甲田山系の樹氷や奥入瀬渓流の氷瀑(ひょうばく)が人気を集める。
 インバウンド需要を取り込もうと、青森市中心部では、多くの飲食店が電子決済システムを導入し、キャッシュレス化を進める。
 津軽三味線の生演奏を売りにする市内の居酒屋「ねぶたの国たか久」の三上友紀店長(33)は「外国人はスマホによるキャッシュレスが多く、システムを導入しないとインバウンドを呼び込めない」と話す。

<日本人離れ懸念>
 外国人観光客急増のきしみも顕在化してきた。青森市の八甲田スキー場で2月、コース外を滑走した米国人男性がクレバスに落下。県防災ヘリが救助したが、一歩間違えば惨事につながりかねない事故だった。
 十和田市によると、十和田八幡平国立公園内での山野草盗掘や規制区域へのスノーモービル乗り入れなど外国人によるとみられる行為も複数報告されている。
 県は禁止事項を記した多言語パンフレットの作製や立て看板の設置を進めるが、効果は限定的だ。市内のホテル関係者は「外国人のマナー違反を放置すれば、日本人観光客の青森離れや住民の苦情が出かねない」と懸念する。
 今後は、インバウンド特需を軌道に乗せ、国際的観光地としての地位確立につなげられるかが課題となる。県は「今後苦情が大量にあれば対応を考える」(誘客交流課)と悠長に構えるが、負の側面に対するきめ細かい対策は欠かせない。

◎専門家の目/マナー対策課題 元青森大学長 末永洋一さん

 青森では中国・天津の直行便誘致でインバウンドが飛躍的に増加した。北海道新幹線が開通し、津軽海峡圏を中心とした立体観光のモデルが出来上がった。観光戦略は三村申吾知事のトップセールスの成果が大きいと考える。
 外国人のマナー違反、ルール無視は全国の観光地で問題視されている。そうした行為が、日本人観光客を遠ざけてしまう側面もあるため重大な問題だ。
 多言語表記の掲示物などでは限界がある。外国人が多く訪れる場所に専門の指導員や案内係を配置し、直接呼び掛ける必要がある。
 まずは英語、中国語、韓国語に対応できる人材がいれば十分だ。マナーやルールだけではなく観光情報を伝えられればインバウンドにとっても便利になる。
 全国トップなのは伸び率であり、絶対数は全国的にまだ低い。外国人と日本人双方が訪れて楽しい観光地づくりを目指さなければならない。


関連ページ: 青森 政治・行政

2019年04月19日金曜日


先頭に戻る