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遺伝子組み換えカイコで福島の養蚕業復活期す 日東紡など医薬品開発

日東紡が飼育する遺伝子組み換えカイコ。骨粗しょう症用の診断薬を生産するよう改良されている

 カイコの遺伝子を組み換え、通常の絹糸とは別の産業を生み出そうという試みを農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)や日東紡(福島市)が共同で進めている。既に骨粗しょう症の診断薬が実用化され、新薬開発も視野に入れる。衰退した養蚕業の復活へ、希望の「糸」を紡ぐ可能性を秘めている。

 遺伝子組み換えカイコは農研機構などが2000年に開発した。カイコの卵に他の遺伝子を注入し、ふ化した幼虫を飼育。その成虫を交配させると、次世代の一部で目的遺伝子だけが組み込まれたカイコが誕生する。
 絹糸ではなく、特定のタンパク質を生成するのが特徴。日東紡が郡山市の総合研究所で飼育するカイコは、骨粗しょう症診断に必要なタンパク質だけを生産する。12年度からこのタンパク質を基にした診断薬を販売し、国内の多くの臨床現場で使われている。
 コストと品質の両面で優れるといい、「カイコは高度に家畜化された昆虫。手間をかけずに、診断薬用のタンパク質をたっぷり作れる」と総合研究所の石原英幹副所長。このタンパク質を生み出すことができる動物細胞や大腸菌の培養に比べ、製造コストが10分の1以下に抑えられるという。
 ほかにiPS栽培培養基材や化粧品原料などで使用している企業もあり、農研機構の担当者は「市場規模は10億円ほど」とみる。同機構や日東紡が蓄積したノウハウを他企業にも提供する「プラットフォーム」を構築し、100億円規模の産業化を目指す計画もあるという。
 退潮が著しい養蚕業の復活にも期待がかかる。日本の近代化を支えた養蚕農家は1929年に約220万戸あったが、合成繊維の登場や絹糸の国際価格競争激化などで年々減少。2017年には336戸にまで落ち込んだ。全国有数の産地だった福島県も44戸にとどまる。
 プラットフォームでは養蚕農家にも遺伝子組み換えカイコの飼育の一翼を担ってもらい、新たな雇用を生み出す。年々増加する耕作放棄の桑畑の有効活用も目指す。
 農研機構生物機能利用研究部門の瀬筒秀樹ユニット長は「欧米でも実現できていない遺伝子組み換えカイコによる産業化は、日本だけの強みになる可能性を秘めている。さまざまな地域産業を生み出し、輸出産業にもつなげたい」と話す。


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2019年04月22日月曜日


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