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<あの時 平成・永田町と東北>改革派知事/先進的政策、国をリード

退任表明後の宮城県知事選で応援演説をする(左から)浅野氏、当時の古川康佐賀県知事、増田寛也岩手県知事、橋本大二郎高知県知事=2005年10月15日、仙台市青葉区
浅野史郎氏
片山善博氏

 平成が終わる。この30年余り、政界では永田町と東北を結ぶ多くのドラマがあった。汚職にまみれた反動が生んだ改革の旗手、倒閣へ大勝負に出た領袖(りょうしゅう)の誤算、政権交代の陰で政局を回してきた実力者−。当時を知る中心人物に振り返ってもらった。

 平成の半ば、永田町と対峙(たいじ)しながら地方自治のあるべき姿を追究した知事たちは「改革派」と称された。先進的な独自政策を競い合い、地方が国をリードする局面もあった。
 前宮城県知事の浅野史郎氏(71)は、相次いだ県組織の不祥事を巡り徹底した情報公開を断行。政党とのしがらみを断ち切った「無党派」を貫いた。
 前鳥取県知事の片山善博氏(67)は、2000年の鳥取県西部地震で被災した住宅再建のために全国で初めて個人資産への公的支援を実現した。
 それぞれ官僚出身だったものの、自治体を軽んじるような霞が関の体質に疑問を投げ掛け続けた。03年7月に「闘う知事会」への転換を掲げた全国知事会の議論をリードした。
 浅野氏は05年、「体制は陳腐化する」と3期12年で退任。片山氏は07年、2期8年で退いた。

◎独立自尊の気概持て/前宮城県知事 浅野史郎氏(71)

 当時の宮城県知事がゼネコン汚職で逮捕されたことに伴う1993年11月の出直し選挙が改革の出発点だった。自民党などが前副知事を推薦。旧厚生省課長を辞して挑んだ無名の私は当初、泡沫(ほうまつ)扱いされた。
 「収賄に絡む知事の後釜に副知事が出るのか」という県民の怒りに押され初当選した。県政で発覚した食糧費不適切支出で徹底調査と全面的な情報公開に踏み切れたのは、自分を「県民から県のトップに送り込まれた存在」と位置付けたからこそ。
 厚生労働省の統計不正問題などの不祥事で政府が取る態度はいつも「逃げよう、隠そう、ごまかそう」。ありがちな第三者委員会の設置はトップの責任放棄にほかならない。
 政党や団体の支持を一切受けず再選を果たした。県議3人が相次いで逮捕される官製談合があり入札制度改革に取り組んだ。事務方の発案。「おらほの知事は建設業界とつながりがない。遠慮は無用」と、職員が「逆忖度(そんたく)」してくれたのだと思う。
 小泉政権が三位一体改革を打ち出し、権限や財源を巡る国と地方の激しい綱引きがあった。「闘う知事会」を掲げた岐阜の梶原拓さん、岩手の増田寛也さんらと共に国が配分権を握る補助金の廃止を迫った。結果は補助金削減という敗北。国に誘惑されて捨てられた形だが、議論は白熱し面白かった。その後、地方分権は目標を失い退潮した。
 知事在任は3期ぐらいまでと1期目から考えていた。12年もやると職員の思考は知事頼みになり、予算編成や議会対応に緊張感がなくなる。米大統領だって2期8年。首長任期も地方自治法で制限したらいい。
 人口減で東京独り勝ちの今、政府が掲げたのは地方創生。笑い話のような自己矛盾で自治体は子ども扱いされている。「浅知恵とひも付きの金はいらない」と言うぐらいの独立自尊の気概を持ってほしい。
(聞き手は東京支社・橋本智子)

◎物乞い 自治体の劣化/前鳥取県知事 片山善博氏(67)

 「改革派」と呼ばれる転機は全国知事会の改革だ。総務省の下請けのような状態にもんもんとしていた知事たちが2001年ごろから非公式に集まり、自覚と結束が徐々に強まった。岩手の増田寛也さん、宮城の浅野史郎さん、岐阜の梶原拓さん、三重の北川正恭さん、高知の橋本大二郎さん。私は新参だった。
 改革派の定義の一つは多選する気のない人。終わりを決めているので保身のための気遣いがなくなる。国にも地元政界にも耳の痛いことをちゃんと言い行動に結び付ける。
 共通項は行政の透明性を高め、税金の無駄遣いをなくし、議会での「学芸会」をやめる。国に対し従順ではなく、現場主義、地方の視点で国の政策を変えさせたこともあった。鳥取で言えば鳥取県西部地震(00年)の住宅再建支援制度。ものすごい抵抗を受けながら全国で初めて創設した。その後は国の制度となり東日本大震災で適用された。在任8年でやっておいて良かったと思った。
 今の知事の多くはあまり問題意識を持っていないのでは。地域の視点で真剣に見れば課題は山積みだ。観光宣伝隊のようなイベントや目立つことばかり気にする人も多い。
 失礼な表現だが、最近の地方は「物乞い民主主義」。昨年の猛暑で小中学校へのクーラー設置議論があった。市町村の仕事だが、ある県の知事は首相官邸に行き財源確保を要望した。既存予算からの捻出とか、固定資産税をほんの少し上げるとか、それが地方自治。折衝や合意形成など面倒なことをやめて陳情する。安倍政権どうこうより自治体の劣化だ。
 地方自治の原点に返る必要がある。地域のことは自分たちの責任で決める気概を持ち、解決策を考え実行する。その過程で邪魔な国の制度を取り払う作業が地方分権改革だ。地方分権は抽象的なことではない。
(聞き手は東京支社・瀬川元章)


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2019年04月28日日曜日


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