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<平成−令和・次代へつなぐ>赤い宝石 より進化

紅秀峰の原木を見守る石黒さん=山形県農業総合研究センター園芸試験場

 平成から令和に元号が切り替わった。移ろいゆく時の中で、東北に受け継がれた伝統や文化、技術を守り続ける人々がいる。時に大胆に、時に慎重に。地域の貴重な資産を次代へつなごうと歩みを進める。

◎(5)新種のサクランボ開発(寒河江)/石黒亮さん(55)

 近くを最上川が流れる圃場の一角。サクランボ「紅秀峰」の原木が4月下旬、今年も白い花を咲かせた。
 山形県農業総合研究センター園芸試験場(寒河江市)の研究主幹兼バイオ育種部長の石黒亮(まこと)さん(55)が、風格がにじむ果樹を頼もしげに見上げた。樹齢39年。「紅秀峰はこの一本から始まり、エースの佐藤錦と共に平成の山形サクランボを支えた。令和の世に出る新品種にもつながった」

●品質低下招く
 「赤い宝石」とも呼ばれるサクランボ。国内生産量の4分の3を占める山形県は、揺るぎない「王国」だ。大正期に東根市で開発され、昭和に入って徐々に名を高めた佐藤錦は昭和終盤の1988年、県内の栽培面積でナポレオンを抜き、トップに躍り出る。
 この年、石黒さんは県庁に入り、配属先の園芸試験場でサクランボと出合った。当時、味が良く単価の高い佐藤錦に生産が偏る弊害が顕在化していた。結実の多い年は作業が集中するため収穫が遅れ、品質の低下を招いてしまう。
 石黒さんは、品種の多様化に向けた研究チームに加わった。大学、大学院で遺伝育種学を学んだ蓄積が役立つ。「専門分野で力を注げる機会を得られたことに縁を感じた」

●紅秀峰が成長
 平成期、数ある候補から佐藤錦に次ぐ銘柄まで成長したのが、佐藤錦を種子親、天香錦(てんこうにしき)を花粉親に交配して91年に品種登録された紅秀峰だった。
 収穫期は佐藤錦より10日余り遅い7月上旬。出荷シーズンの拡大や作業の平準化に貢献した。サイズは2L(直径25ミリ以上)が中心で、L(22ミリ以上)クラスの佐藤錦と比べて大玉だ。
 成果をより進化させようと、石黒さんらは500円玉(26.5ミリ)を上回る超大玉品種の開発に挑む。
 紅秀峰を種子親、レーニアと紅さやかを掛け合わせた子を花粉親に交配させた97年の品種は有望だった。2011年から実地で栽培試験を重ね、17年、県による「山形C12号」の品種登録出願にこぎ着けた。

●「長所に光を」
 紅秀峰より大きな3L(28ミリ以上)が多くを占め、4L(31ミリ以上)も2割ほど。佐藤錦並みの甘さを誇り、果肉が硬く日持ちが良い。収穫期は佐藤錦と紅秀峰の真ん中に当たる6月下旬。「高齢化と大規模化が進む中、負担の軽減は時勢にかなう」
 近く名称が決まり、22年デビュー、23年本格販売の予定だ。海外の大玉が並ぶ国際市場にも照準を合わせ、山形ブランドで打って出る。果実が大きいほど高値がつくのは世界共通で、石黒さんは勝算ありと踏む。
 「どの品種にも欠点は少なからずある。長所に光を当ててこそ次代を切り開ける」(山形総局・菊地弘志)


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2019年05月05日日曜日


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