岩手のニュース

秋サケの不漁打開へ 岩手県が稚魚の「体質改善」に着手 県沿岸河川産と交配も検討

調査船によるサケの稚魚の採取作業=4月17日午後7時ごろ、岩手県山田町沖の山田湾

 長期化する沿岸秋サケ漁の不振を根本から打開しようと、岩手県が稚魚の「体質改善」に乗り出した。不漁の一因を海水温の上昇と推定。比較的高水温に強いとみられる北上川を古里とするサケに着目した。回帰率や遺伝的特徴を調べ、将来的に県沿岸河川産のサケとの交配も検討する。

 岩手県山田町沖の山田湾で4月中旬、県水産技術センターの調査船が試験操業を行った。集魚灯でサケの稚魚をおびき寄せ、体長8センチ、重さ6グラムほどに成長した約200匹を採取した。
 稚魚は、この時期としてはやや大きめ。センター漁業資源部の清水勇一研究員は「北上川のサケかもしれない。遊泳力があり、順調に育っている」と評価した。
 センターは昨年11月、北上川支流の砂鉄川(一関市)に遡(そ)上(じょう)したサケから採卵し、稚魚40万匹をかえした。県沿岸河川で採卵、ふ化させた40万匹と共に2月末、釜石市の唐丹湾に注ぐ片岸川で放流している。
 岩手県沿岸を北上するルートに3、4カ所の採取ポイントを設定し、4月に追跡調査を始めた。5月末まで計8回にわたって稚魚を採取。耳石標識で北上川産と県沿岸河川産に分けて足取りや成長速度を比べる。
 北上川のサケは外洋を回遊した後、海水温が20〜25度と一年で最も高くなる9月に石巻市の河口にたどり着く。これに対して県沿岸河川にサケが回帰するのは11〜12月で、海水温は10〜15度に低下している。
 一方、稚魚を放流した後の4月の平均沿岸海水温は、1975年の6.7度から2018年は7.6度に上昇していた。
 センターは春の海水温が高くなると稚魚の分布密度が低くなることを突き止め、海洋へ向かう前に高水温で稚魚が死滅するのが不漁の根本要因と推測。北上川のサケなら高水温でも生存できると仮説を立てた。
 センターは3、4年後の回帰率を比較し、北上川産サケの高水温耐性メカニズム解明を目指す。ふ化水槽の温度を調節するなど適切な成育法を確立するとともに、北上川と県沿岸河川のサケの掛け合わせも模索する。
 センターの太田克彦漁業資源部長は「北上川のサケと似たような遺伝的系統を持ったサケが沿岸部にいれば成育環境を調べ、繁殖や飼育方法に応用できる」と話している。

[沿岸秋サケ漁の不振]
 岩手県の漁獲量は北海道に次いで全国2位。ただ、1996年度の2447万1000匹をピークに減少傾向が続いている。2011年の東日本大震災と16年の台風10号豪雨でふ化場が被災した影響もあり、過去10年間は380万匹前後で推移。18年度の漁獲量は350万8000匹にとどまった。

[耳石標識]
 耳石は魚の頭の左右にある平衡感覚を保つための骨。水温変化で線が刻まれる性質を利用し、ふ化場の水槽温度を変化させて個体識別の標識とする。


関連ページ: 岩手 社会

2019年05月10日金曜日


先頭に戻る