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<ニュース深堀り>Jヴィレッジ全面再開 地域との接点続く模索

全面再開のイベントでサッカーを楽しむ子どもたち。奥の全天候型練習場は魅力向上のため新設された=4月20日、Jヴィレッジ

 東京電力福島第1原発事故の対応拠点になったサッカー施設Jヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)=?=が4月20日、約8年ぶりに全面再開した。交流人口の拡大をけん引し、真に「復興の象徴」となるには継続的な魅力発信が欠かせない。復興途上の地域にもっと親しまれる交流拠点となることも求められる。
 「来年3月、東京五輪の聖火リレーのスタート地点になる。どんな困難も克服できるというメッセージをこの地から発信したい」
 内堀雅雄知事は20日、Jヴィレッジで報道各社の取材に答え、施設の復活に被災から立ち上がる福島の姿を重ね合わせた。
 一時は事故収束の関係車両で埋まったグラウンドが緑に輝き、子どもたちの歓声が響いた。JR常磐線の最寄り駅も同日開業。音楽や食も楽しめるイベントに過去最多の約2万人が来場し、順調に滑りだした。
 課題は、利用者をどう持続的に確保するかにある。
 運営会社によると、昨年7月の一部再開から今年3月までの8カ月間、合宿などの宿泊者数は事故前の水準を回復。しかし来場者は約20万人と、以前の年間50万人水準に達していない。
 利用者の伸び悩みは空白期間の影響が大きい。この間に各育成年代の全国大会は他の都道府県での開催に変わり、各地に増えた類似施設との競合が進んだ。
 運営会社は原発事故が残す不安も根強いとみる。ホームページで放射線量を公開し、要望に応じて説明も尽くす同社の上田栄治副社長は「一度来てもらえば安全性が確認でき、次につながる。地道に理解を求めていく」と言う。
 期待を寄せるのは発信力のある選手らの存在だ。日本サッカー協会が支援の姿勢を明確にし、2月には女子日本代表「なでしこジャパン」が強化合宿。東京五輪男女代表の事前合宿も決まり、聖火リレーとともに大きな発信力を持つ。
 他スポーツの利用も広がりつつある。4月下旬、ラグビートップリーグのチームとして合宿をしたクボタは選手の反応が上々。7人制でリオ五輪日本代表だった合谷和弘選手(26)が「これほど充実した施設とは知らなかった」と驚き、伸びしろをうかがわせた。
 周辺の被災地域の住民は多くが避難先で暮らし、休業前と大きく状況が変化した。帰還や転入で実際に居住する人口割合は地元の楢葉町で5割強、広野町で9割弱だが、旧避難指示区域全体では3割に満たない。
 施設側も新たな役割を意識する。「『地域にこれがあるから住んでみよう』と思ってもらえる役割も果たさなければならない」と上田副社長は強調する。
 4月には全町避難する双葉町がいわき市に置く小学校と幼稚園から児童と園児計約20人の遠足を受け入れた。ただ地域との接点強化はまだ手探り状態だ。
 住民らの間には「トップ級選手向けの施設」のイメージが根強い。「敷居が高い」との指摘もあり、一部グラウンドの常時開放や遊具設置といった気軽に訪れやすい仕掛けも検討する。
 「日本サッカーの聖地」の称号を取り戻しつつ、地域の交流拠点にもなるという難題への挑戦は続く。(いわき支局・佐藤崇)


【Jヴィレッジ】1997年開設。東京電力が建設し福島県に寄付した。面積49ヘクタール。天然芝と人工芝のグラウンド9面、5000人収容のスタジアムのほか、国内最大級の全天候型練習場を新設。宿泊施設は117室増え200室。原発事故の対応拠点となった後、東電が原状回復工事をし、2018年7月の一部再開を経て全面再開した。観光や企業研修などの利用拡大も図る。


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2019年05月13日月曜日


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