宮城のニュース

津波被害越え令和へ 錦絵「御酒頂戴」修復、改元直前に完了 塩釜の酒蔵「佐浦」で展示

修理された「御酒頂戴」。左側に酒樽が見える。津波による縦染みや汚れなどが激しかった
修復した柴村さん(左)、天野准教授(中央)の説明を受けながら作品を見る冨谷さん

 明治の始まりを祝う東京の様子を描き、東日本大震災の津波で傷んだ浮世絵木版画「御酒頂戴」が修復され、所有者の日本酒「浦霞」醸造元、佐浦(宮城県塩釜市)に戻った。明治天皇から酒を賜り、祝賀ムードの庶民を活写する錦絵。平成から令和になり、同社は「同じように時代が移り変わる今、紹介したい」と店内で展示している。
 錦絵は縦35.6センチ、横70.2センチ。作者は3代目歌川広重(1842〜94年)で、1868(明治元)年11月以降の作とみられる。同10月に明治天皇が東京に行幸した際、皇居入りを祝って2990樽、瓶子(へいし)550本の酒などを振る舞った時の様子を描く。
 背景の江戸城や富士山など昔ながらの江戸の風景と、のぼりに書かれた文字「天盃(てんぱい)御用」「東京」との対比で御代(みよ)変わりを表現。福助などの仮装で祝う庶民が描かれている。
 佐浦は社内で所蔵してきたが、津波で作品の半分ほどが浸水。2015年にNPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク(仙台市)を窓口に修復を依頼した。
 当時、東北大に勤めていた天野真志・国立歴史民俗博物館特任准教授(日本近世近代史、資料保存)が対応。その作業場に東北芸術工科大(山形市)の学生として週末に通っていた柴村桜子さん(25)=芸術文化専攻=が卒論として修復することになった。
 初めて作品を見た時、浸水で付いた縦染みに驚いたという柴村さん。「そこばかり目に入った。素晴らしい絵なのにもったいない、と思った」と振り返る。
 染料を落とさず、少量の水でいかに汚れを取り除くか。染料の原料など「一つ一つ確認しながらの作業だった」と言う。指導教官の助言を受け、修士課程に進んだ後を含め2年余りかけて仕上げ、天野さんと一緒に今年4月下旬に佐浦に届けた。
 天野さんは「かびが生えていなかったのが幸いだった。大量に流通した刷り物だが、時代変化を酒で表現した絵を蔵元が持っている点に意味がある」と語る。
 佐浦の冨谷圭輔企画部長は「被災した絵がこのタイミングで戻ってきた。新しい時代へのメッセージとして見てほしい」と話す。塩釜市本町の店舗で5月末まで展示し、解説書も置く。


2019年05月14日火曜日


先頭に戻る