山形のニュース

<この人このまち>湯の街名物 82歳駆ける

佐藤則夫(さとう・のりお)1937年大蔵村生まれ。バス会社退職後、97年から人力車を運行。2人乗り30分2000円。連絡先は肘折いでゆ館0233(34)6106。

 山形県大蔵村の肘折温泉で、今年も名物の人力車の運行が始まった。車を引くのは地元在住の佐藤則夫さん(82)。路線バスの運転手を定年退職した後に車夫となり、22年目を迎える。傘寿を過ぎても軽快な足取りは衰えず、粋な「車屋」姿で温泉街に情趣を添える。
(新庄支局・阪本直人)

◎大蔵村肘折温泉の人力車夫 佐藤則夫さん/バス運転手退職後、一人でも力になれることを考え選んだ

 −10連休となった今年の黄金週間は例年になく、忙しかったのでは。

 「4月末から5月初旬の肘折は残雪の中に新緑が映え、桜も楽しめます。今年は宿泊客の依頼が多く、温泉街を毎日4周ぐらい回りました。以前はもっと多く回りましたが、最近は自分の体と相談して無理せずにやっています」
 「なじみのお客さんから『元気ですか。今年もまた行きます』と連絡をもらうとありがたいです。県内はもとより、仙台や東京などからも来てくれます。私よりずっと年上だったり、40代や50代の方だったり。車を引いて案内しながら、いろんな話をして。お互い楽しい人生になるよう励まし合い、力をもらいます」

 −82歳で人力車を引き続けられる秘訣(ひけつ)は。

 「ここのお湯は足腰の疲れによく効くので、共同浴場に毎日通っています。体調を常に気遣ってくれる家族の応援も大きいです」
 「大人2人を乗せると結構な重さになりますが、車を引く時のこつがあります。踏ん張ってばかりでも動かない。道路の状況に応じて走ることが大切です。坂道でうまく力を加減したり、路面のへこんだ部分を避けたり。温泉街の道は全て体に染み込んでいます」

 −始めたきっかけは。

 「バスの運転手をしていた頃、湯治客が年々減り、温泉街に活気がなくなっていくのを肌で感じました。退職後に自分一人でも何か力になれること、しかも温泉の情緒に合うものをと考えて人力車を選びました」
 「人力車は当時の値段で1台150万円しました。タイヤを2回交換した以外は故障もなく、大事に引き続けています。人力車の運行は10月までですが、今では毎日見ないと気が済まないくらい愛着があります」

 −これからの活動は。

 「冬には、かんじきを履いて雪の中を歩くボランティアガイドもしています。道路が整備されていなかった頃、湯治客は雪の中を歩いて峠道を越えました。当時の様子を知ってもらう体験です。体力的に年々つらさを感じますが、人力車も長く続けたいと思います」


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2019年05月20日月曜日


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