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<裁判員裁判・東北の10年>法曹三者トップインタビュー(中)仙台高検検事長 大谷晃大さん(62)/調書の扱い柔軟運用を

[おおたに・こうだい]東大法学部卒。84年任官。最高検公判部副部長、京都地検検事正、横浜地検検事正を経て、18年7月から現職。兵庫県出身。62歳。

 −裁判員裁判の審理にどう取り組んだか。

<的確に把握>
 「裁判員制度施行前の検察官の立証・公判活動は分かりやすさという要素を意識してこなかった。単に法廷で使う言葉を平易にすれば足りるものではない。集めた証拠をかみ砕き、裁判員も理解できるようにポイントを押さえた主張・立証の組み立てを意識している。捜査も公判を見据え、事案の核心と全体像の的確な把握が求められる」
 「裁判員経験者のアンケートでは検察側の公判活動について、おおむね分かりやすいという評価を頂いているが、さらに工夫と努力を重ねたい。制度をしっかり定着させなければならないという問題意識は法曹三者で共通している」

 −「調書裁判」の脱却を模索した10年だった。

 「調書に頼らない審理を実現するというのは一つの出発点だが、その長短はある。人証が書証よりも常に分かりやすいという、ある種のドグマ(教義)に陥っていないだろうか」
 「調書の取り扱いは、もっと柔軟に事件の個性に応じた運用を実践するべきだ。法廷に呼び出される証人の負担にも配慮が必要だ。今まで『基礎編』で続いてきた裁判員制度は『応用編』を意識する必要がある」

 −遺体写真など刺激の強い証拠の取り扱いには議論もある

 「制度開始当初は大きな問題として意識されておらず、福島地裁郡山支部の元裁判員がストレス障害となったことを契機に裁判所が採用に慎重になった。その傾向は強くなっている」
 「裁判員の精神的負担への配慮は大切だが、生の証拠に基づいて事実を認定し、真相を明らかにするのが刑事裁判だ。過度に証拠を加工すれば、実相を離れてバーチャル化してしまうという危惧がある」

 −公判前整理手続きも審理も長期化傾向にある。

<長期化課題>
 「社会の耳目を集める事件は長期化しがちだが、公判前整理手続きの長期化は制度運用の一番の課題と捉えている。人証中心の審理をする以上、証人の記憶が新しいうちに公判を開く必要がある。弁護側への証拠開示は全国的にも起訴後2週間を原則にしていて、任意開示も柔軟にしている」

 −裁判員裁判に対する検察側控訴の在り方は。

 「裁判員裁判の判決は国民の良識が反映されたものであることをできる限り尊重するべきだし、それは控訴を検討する際の考慮要素になっている。一方で検察官は公益の代表者であり、事実認定や量刑に明らかに誤りがある場合は控訴せざるを得ないことを理解してほしい」


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2019年05月21日火曜日


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