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<暮らしの中の動物たち>[1]ニホンミツバチ(上)/人と同じ「引っ越し」も

ニホンミツバチ
川村康浩(かわむら・やすひろさん)1965年仙台市生まれ。麻布大獣医学部獣医学科大学院修士課程修了。動物病院勤務などを経て、94年に仙台市で川村動物クリニック開業。2016年宮城県川崎町に移住し、クリニック経営の傍ら、日本犬牧場「銀河の郷」を開設。

 宮城県川崎町で日本犬牧場を開設し、家畜などを飼育する獣医師が、実体験などを交えて家畜や野生動物など、人間の身近にいる動物たちについて語ります。

 田舎暮らしを始めて、憧れていたことの一つが、ミツバチを飼ってみたいということでした。世界中で広く飼われているのはセイヨウミツバチで、日本の養蜂家が飼っているのも、ほとんどがそうです。アジアの多湿の気候には本来マッチしていないのですが、それでも一生懸命に労力をかけて育てているのです。
 一方、日本の野山には昔からトウヨウミツバチの仲間であるニホンミツバチがすんでいます。
 養蜂家がセイヨウミツバチを飼う最大の理由は、巣から採れる蜂蜜の量でしょう。ニホンミツバチに比べ4倍から、多ければ10倍ともいわれる蜂蜜を採取することができるのです。
 2番目には、セイヨウミツバチが生涯自分の巣箱から逃亡しないことです。このため、安心して養蜂を行うことができるのです。
 それと正反対なのがニホンミツバチです。すみか(巣箱)が気にいらなくなると逃げてしまいます。人に手を掛けられようが、そうでなかろうが生きていけます。しかし、セイヨウミツバチは人の手が掛からない環境では確実に滅びます。いわば、人とニホンミツバチは対等で、飼育に難しさはありますが、ハチと親密に会話でもしているかのような親近感が得られる素晴らしい昆虫です。
 ニホンミツバチが春から夏にかけて行うのが、分蜂と言われる行為です。簡単にいえば、一つのハチの巣が二つに分かれるのです。
 一つの巣には1匹の女王バチしかいませんが、巣の環境がよくハチが殖えてくると、女王バチは次世代の女王バチを産みます。そうすると、古株の女王バチは働きバチを何千匹か引き連れて、巣を後にします。
 このハチの大群は数時間から長ければ1週間、木の枝や屋根裏などに集まっています。新しいすみかにいいのはどこか、偵察に行ったハチたちが帰ってきて協議します。
 「東には花がたくさんあって、日陰の杉林の木に穴が開いているよ」とか「西に空いている木箱があって雨も当たらなそうだ」と、いくつもの候補地が出されて協議が終われば、決定した新居目がけて大群が飛び立つのです。
 私はこんなニホンミツバチに大自然のロマンを感じずにはいられません。


2019年05月24日金曜日


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