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<青森知事選>多選は是か非か 識者に聞く

松沢成文(まつざわ・しげふみ)川崎市生まれ。慶大卒。松下政経塾3期生。衆院議員を経て、2003年から2期8年、神奈川県知事。県議会に知事の多選禁止条例を提案し、07年10月に成立。13年から現職。61歳。
辻一幸(つじ・かずゆき)山梨県早川町生まれ。青山学院大卒。人口約1000の町で1980年から、現役首長では最多の連続10期町長を務める。78歳。

 任期満了に伴う青森県知事選(6月2日投開票)は、新人の歯科医佐原若子氏(65)と5選を目指す現職の三村申吾氏(63)が立候補した。三村氏が当選すれば、在任期間が県政史上最長の知事となる。政治権力が集中する首長を選択する上で、多選は是か非か。神奈川県知事時代に多選禁止条例を制定した松沢成文参議院議員、10期連続当選の山梨県早川町の辻一幸町長の2人に聞いた。(聞き手はむつ支局・勅使河原奨治)

【反対】権力集中政治が腐敗/多選禁止条例制定の前神奈川知事 参院議員松沢成文氏

 −多選知事の弊害は何か。
 「4点ある。一つは政治が独善化する。次に行政がマンネリ化する。人事権を持った知事の前で、茶坊主と化した役人ばかりが出世するようになる」
 「3点目は議会と知事が癒着するようになる。議員は行政をチェックする本来の仕事をしなくなる。知事の権力を分けてもらう形で予算を取ることをアピールするようになる。4点目は業界、利益団体との癒着。県が補助金を出し、各種団体が政治献金をするようになる。この四つが続くと民主政治は腐敗する」

 −多選を禁止すべき原理とは。
 「民主政治とは、政治権力を集権(独裁)ではなく分権にすることだ。分権には、三権分立や地方分権、時間的な分権がある。日本は時間的な分権ができていないから、政治権力の腐敗につながる」

 −時間的分権とは何か。
 「米国、フランスなど世界の政治をみても、1人に行政権限が集中する場合は2期8年のように時間的制約がある。長期政権が腐敗するのはギリシャ、ローマから近代までの歴史をみても明らかだ」

 −なぜ首相でなく知事の任期にこだわるのか。
 「総理大臣よりも知事の方が権力が集中する仕組みになっている。憲法が行政権を内閣に与えているのに対し、地方自治法は、首長に与えている。総理は閣議で大臣が反対すれば、罷免しなければ施策を進められないのに対し、知事はその必要がない」

 −有権者が選挙の度に判断すればいいのではないか。
 「選挙は現職が圧倒的に有利だ。現職は4年間の行政活動で名産品のPRなど何をやっても選挙に有利に働く。利益団体もまとめている現職に新人が挑戦して勝つことは難しい。施策の継続を求めるのであれば、後継者を指名すればいい」

【賛成】長期的視点継続が力/連続10選の山梨・早川町長 辻一幸氏

 −40年近く町政を預かっている。
 「多選がどうかと問われても答えようがない。4年間で何をするか、何をしたかをはっきりと示し、有権者に認めてもらうことが大事だ。自分と支持者の意思で1期ごとに区切りを付けて決意している。何期目でも同じ。5期が長いとか、何期が短いとかは選ぶ人の問題だ。自分が駄目だと思われたら、いつだって辞める」

 −多選を批判する声がある。
 「多選の弊害を感じさせること自体が行政運営の失敗。不公平な施策やひいきをすれば弊害になる。長期政権になるということは、その弊害が少ないということだ」

 −メリットは何か。
 「長期ビジョンは大事だ。4年ごとに首長がころころ変わるようでは町民にとってプラスにならない。国へ要望する際も当選回数が多い方が相手に評価されやすいし、継続性を持って訴えられる」

 −長期だからできたことは。
 「地域が衰退しないようにと平成の大合併に反対した。それどころか、昭和の合併で一つになった六つの旧村に自治の主体を戻し、学校を存続させた。町の小学校は給食も修学旅行も完全無料だ。知識と経験があればこそ、効率化と称した国や県の地域切り捨てに対抗できる」
 「山村の森林を守るため、25年をかけて森林環境税の法整備を促した。山の日の設立も訴えた。小さな自治体でも国を動かすこともできた」

 −権力を腐敗させないために必要なことは何か。
「とにかく公平公正が大事。談合や公共工事に介入するようなことがあってはいけない。自らが清潔であって謙虚でなくてはならない」

 −やる気を失ったり、惰性になったりしないか。
「夢を追っていれば、発想が枯れることはない」


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2019年05月24日金曜日


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