宮城のニュース

<裁かれる優生手術>(下)法廷の攻防 切実な声 裁判所動かす

原告側が3月20日に陳述した最終準備書面。人生を奪われた女性らの悲痛な思いをくんだ

 「子を産み育てることは、人生にどんな意味を持つことだと思いますか」

 ◆認否を拒否
 仙台地裁で2月上旬にあった旧優生保護法(1948〜96年)を巡る国家賠償請求訴訟の口頭弁論。一連の訴訟で初の本人尋問で、裁判長が原告の飯塚淳子さん(70代、活動名)=宮城県在住=に問い掛けた。
 飯塚さんが優生手術を施されたのは16歳の時。「友達の家には子どもや孫がいて。にぎやかな家庭をうらやましく思う。国は早く謝罪してほしい」。無機質な法律論争が中心となる審理の中で、切実な訴えが響いた。
 原告側は、旧法下で強制不妊手術を受けた被害者の救済を怠り続けた政府と国会の「立法不作為」を主張してきた。前提としたのは「子を産み育てる権利」の侵害。憲法13条が保障する幸福追求権に基づく自己決定権や人格権から導いた。
 対する国側は「国賠法に基づく個別の賠償請求が当時からできた」と反論。旧法の憲法適合性については「別次元の議論」などと突き放した。
 昨年6月の第2回口頭弁論。「主要争点ではない」と合憲性の認否を拒否した国側代理人に、原告弁護団長の新里宏二弁護士(仙台弁護士会)は「『当時は合法』と言って補償を拒否してきた国が一番大事な認否をしないのはどういうことか」と法廷でただした。
 飯塚さんら被害者は高齢化している。審理が足踏みすれば、司法による救済の道は閉ざされかねない。「訴訟の引き延ばしを図ろうとしている」。弁護団は国への不信感を募らせた。

 ◆審理熟した
 長期化も危ぶまれた状況を打開したのは裁判所だった。この日、裁判長は「憲法判断を回避する予定はない」と述べ、国に合憲性の認否を早期に明らかにするよう求めた。
 その後も裁判所の積極的な訴訟指揮が続いた。昨年11月には、不法行為から20年が経過すると賠償請求権が消滅する民法の除斥(じょせき)期間について、優生手術への適用の是非を「争点の一つ」と明言。この点の憲法判断も示唆した。
 優生手術は全国で約1万6500人に強いられたとされる。除斥期間を単純に当てはめれば、旧法が母体保護法に改定された96年の時点で98%が既に請求権を失っていたことになる。
 1年2カ月の審理で、焦点は「政府と国会の立法不作為の有無」「除斥期間の適用の是非」「旧法の合憲性」に絞られていった。
 「私の闘いはあまりにも長過ぎました。裁判所には一刻も早く国の責任を認めていただきたいです」
 内容次第で結審が予告されていた3月20日の口頭弁論。飯塚さんが意見陳述を終えると、傍聴席から拍手が湧いた。通常は法廷では認められない行為だが、裁判長は止めなかった。
 「審理が不十分な論点がある。反論も用意している。それでも結審するのか」。国側代理人は前日に提出した審理継続を求める意見書に触れながら抵抗したが、聞き入れられなかった。
 「審理は熟した」。裁判長は結審を告げ、判決期日を5月28日に指定した。



 旧優生保護法を巡る全国初の国賠訴訟の判決が28日、仙台地裁で言い渡される。訴訟は、子を産み育てる権利を奪う優生手術の闇を白日の下にさらした。原告らの道のりと、1年4カ月にわたった法廷での応酬を振り返る。
(報道部・横山勲)


関連ページ: 宮城 社会

2019年05月26日日曜日


先頭に戻る