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<18年度農業白書>解説/「稼げる輸出」程遠く

 2018年度版農業白書は「攻めの農業」の主軸である輸出拡大戦略にスペースを割いたが、「稼げる輸出」への道のりは遠いことも浮かび上がった。輸出で重要条件となる衛生管理の認証取得が農家に広がらず、東京電力福島第1原発事故による風評被害も依然根強い。
 18年の農林水産物・食品の輸出額は前年比12.4%増の9068億円。6年連続で過去最高を更新した白書は「日本食人気を背に堅調な需要がある」と分析する。ただ、農産物輸出額だけでも例年10兆円を超える米国などには及ばない。
 競争力強化と風評払拭(ふっしょく)を進める策として、政府は食品生産過程の安全性を担保する認証「GAP(ギャップ)」の普及を推奨する。来夏の東京五輪・パラリンピックの選手村での食材調達基準でもある。
 申請費の公的補助はあるが、「手続きが煩雑」「五輪は一過性でしかない」と冷ややかな農家は多い。福島県は18年度の新規取得経営体が208で全国2位の伸びだったが、3月末の認証面積は県内農地のわずか1.9%にとどまる。
 県内54農家でつくるNPO法人の理事長で二本松市のコメ農家斉藤登さん(59)は、16年2月にGAPを取得したが「流通業界に趣旨が知られておらず販路拡大につながらない」と嘆く。「例えば地方農家も大手商社と優先取引ができるなど認証を生かせる施策が必要だ」と強調する。
 政府に求められるのは、生産者の声をつぶさに聞き、きめ細かな対応に手を尽くすことだ。現場を置き去りにした「攻めの農業」は実を結ばない。(東京支社・橋本智子)


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2019年05月28日火曜日


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