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<旧優生保護法国賠訴訟>続く苦悩(上)期待と失望/けじめの日 頭の中が真っ白に

仙台地裁前の公園で開廷を待つ飯塚さん(右)と東京訴訟の原告男性。期待は2時間後に打ち砕かれた=28日午後1時ごろ

 「緊張しちゃって。昨晩は眠れなかった」
 提訴した昨年5月17日と同じ、お気に入りのグレーのジャケットを羽織った。今月28日は、けじめの日になるはずだった。

 ■ にじむ疲労
 旧優生保護法(1948〜96年)を巡る一連の訴訟で全国初の判決が言い渡される2時間前。原告の飯塚淳子さん(70代、活動名)=宮城県在住=は仙台地裁前にある公園の木陰のベンチに腰掛け、審理のたびに通った庁舎を眺めて涼んだ。
 駆け付けた東京訴訟の原告で仙台市出身の70代男性が隣に寄り添った。2人は共に全国組織「優生手術被害者・家族の会」の共同代表を務める。支え合って判決の日を迎えた。
 寝不足の飯塚さんに疲労の色がにじむ。「きっと裁判所は国の責任をしっかり認めてくれる」と気持ちを奮い立たせたが、期待はあっけなく打ち砕かれた。
 判決は旧法の違憲性を認め「優生手術の被害者は一生涯にわたり救いなく心身ともに苦痛を被り続ける」と強調。被害救済は「必要不可欠だった」としたが、「現時点では救済措置の必要性が国会で明白であったとはいえない」と結論付けた。救済を放置し続けた政府と国会の不作為は「違法」とされなかった。

 ■ 隠せぬ動揺
 傍聴席の最前列にいた原告女性の義姉の佐藤路子さん(60代、活動名)は頭の中が真っ白になった。「違憲と認められたのは良かったというか、当たり前で。(原告の妹に)何て報告すればいいの」。失望と動揺を隠し切れなかった。
 「不当判決」。請求棄却が言い渡された直後、地裁前で垂れ幕を掲げた原告側の男性弁護士は「弁護団の誰も手を挙げなかったので役回りを買って出た。『まさかね』と思っていたから」と明かした。
 原告側が開いた記者会見の空気は重かった。
 弁護団長の新里宏二弁護士(仙台弁護士会)は「期待が大きかっただけにやりきれないが、しゅんとしたら終わりだ」と前向きな姿勢を示したが、声が震える場面もあった。「声を上げ続けた飯塚さん、声をつないだ佐藤さんはやっと救済される時が来たと思っていただろうに。無念かと思う」

 ■ 希望捨てず
 判決から一夜明けた29日。前日に帰宅した後は歩く気力もなかったという飯塚さんも、判決を不服として控訴する意向を新里弁護士に伝えた。
 「判決後は何も手に付かなくて。体調も悪く、死んで楽になってしまいたい気持ちになったけど、やっぱりまだ頑張らないと。私が声を上げ続ければ、きっと名乗り出られずにいる誰かに届くと思う」
 飯塚さんは、希望を捨てていない。


 旧優生保護法を巡り、女性2人が国に損害賠償を求めた訴訟の仙台地裁判決は旧法を違憲と判断したものの、救済を怠り続けた国の賠償責任を認めなかった。期待を裏切られた原告らの思いと、控訴審に続く訴訟の争点を探る。(報道部・横山勲)


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2019年05月30日木曜日


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