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<旧優生保護法国賠訴訟>明白性(下)不作為の立証に高い壁

国会で救済の必要性が「明白でなかった」との判示を聞き首をかしげた原告側の弁護士もいた=28日、仙台地裁

 28日の旧優生保護法(1948〜96年)を巡る国家賠償請求訴訟の仙台地裁判決は、約20分にわたり要旨が読み上げられた。

 ■ 判例わずか
 「救済の必要性が一定程度認識されていたとしても、立法措置が必要不可欠であることが国会で明白であったとは言えない」
 裁判長はこう述べ、優生手術の被害救済に向けた立法措置を怠った国の不作為を「違法」と主張した原告女性側の訴えを退けた。
 「立法措置が必要不可欠だったとまでは認められていて、最後のハードルの『明白性』を否定されてしまった」。判決後の記者会見で、原告弁護団長の新里宏二弁護士(仙台弁護士会)は唇をかんだ。
 何が明暗を分けたのか。
 そもそも国の「立法不作為」が違法とされた過去の判例はごくわずかで、認定の要件が厳しい。
 まず、憲法で保障される権利の侵害が前提となる。その上で被害者の権利行使の機会を確保するには何らかの立法措置が必要不可欠であり、必要性が明白なのに国会が対応を怠り続けたと認められる場合のみ、例外的に「違法」と判断される。

 ■ 概念未定着
 地裁判決は、優生手術を認めた旧法の規定は、憲法が保障する「子を産み育てるかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)」を侵害し「違憲」と指摘。差別にさらされる被害者が施術時に訴え出ることは困難だったと認めた。
 その上で、現時点で被害者が訴え出るには、不法行為の時から20年たつと訴える権利を自動的に失うと定める民法の除斥期間の規定が壁になると指摘。手術を強いられ40年以上たった原告の女性2人は権利を失うため、除斥規定の存在を、立法措置が必要不可欠とする根拠に位置付けた。
 こうした前提を踏まえた上で判決は「リプロダクティブ権に関する法的議論の蓄積がなく、概念が社会に定着していない」との現状認識を盾に、国会で立法措置の必要性が明白でなかったとし、不作為の違法性を問わなかった。

 ■ 正義の問題
 この判示に、立法不作為の判例を研究してきた立命館大大学院の松本克美教授(民法)は首をかしげる。
 旧法が差別的条項を削った母体保護法に改定されたのは、国が明白に問題意識を持っていたためと捉えるのが妥当とする考えに立ち「優生手術の幸福追求権の侵害は明らかで、リプロダクティブ権に絞って議論の蓄積を考える必要もない」と切って捨てる。
 判決翌日に会合を開いた全国被害弁護団は前向きに議論を重ねた。
 国が国連から過去3度の補償勧告を受けた際の政府と国会の対応などを精査して改めて「明白性」を立証するとともに、除斥期間の適用を巡り例外的な中断や停止が認められる余地がないかを検討するという。
 「国会のサボりで救済を放置された被害者を司法が見捨てちゃ駄目さ。これは正義の問題だから」
 会合後、弁護団の共同代表を務める新里弁護士は控訴に向け、決意を新たにした。


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2019年05月31日金曜日


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