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<暮らしの中の動物たち>[2]ニホンミツバチ(中)花の香りで巣箱へ誘う

ネットの中のキンリョウヘンの花に群がるニホンミツバチ

 この日の感動を私は生涯忘れることはないでしょう。わが家に設置した巣箱に初めてニホンミツバチが入ってくれた日です。
 当初は巣箱に、全く入ってくる気配がありませんでした。時期なのか、場所なのか、巣箱の問題なのか、いろいろ調べるうちに、ニホンミツバチの誘引によいという花を見つけました。
 ランの仲間でキンリョウヘンといい、ニホンミツバチだけを誘う香りを放つのです。セイヨウミツバチには効果はありません。
 私は早速インターネットで注文しました。届いた箱の中を確認すると、間違いなく開花したキンリョウヘンがありました。
 夕方、半信半疑の中、巣箱の入り口にキンリョウヘンを置きました。次の日の朝、巣箱をのぞくとミツバチが数匹ですが入ったり出たりしています。「こんなに早くミツバチが来るの?」。私は効果の早さに驚嘆しました。しかし、この数時間後に起こる感動までは予測できませんでした。
 せいぜい、新居の候補地の一つになればいいと思った程度でしたが、徐々に巣箱を出入りするミツバチの数が増し、2時間後には100匹以上になっているように見えました。少し期待が膨らんできました。
 家を訪れた人から昼頃に「今、ミツバチの大群があっちの方向に飛んで行きましたよ」と言われました。大群は巣箱の近くまで来たものの、別の場所を選んで飛び去ったのだと落胆しました。
 しかし、がっかりしていた時間は20分ほど。ミツバチたちは戻ってきたのです。空が真っ黒になるほどに空を舞っていました。
 ミツバチは物すごい羽音を立てて空を飛び、巣箱を出入りしていました。そして、いつの間にかミツバチたちは、アラジンの魔法のランプに煙が吸い取られていくように、巣箱の中に納まったのです。空には明るさが戻りました。
 ミツバチの大群の行動を目の当たりにして「すごい」という言葉以外には思いつきませんでした。本当の感動とはこういうことを言うのでしょう。こうしてわが家は、ニホンミツバチと暮らす生活が始まりました。
(獣医師・川村康浩)


2019年06月07日金曜日


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