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<宮城県沖地震41年>リスクの連鎖(中)津波想定 最大級 復興の街「浸水」

戸建ての災害公営住宅が並ぶ幾世橋地区。海(中央奥)から平地が広がる=福島県浪江町

 宮城県沖地震は、1978年6月12日の発生から41年となった。政府の地震調査委員会が今年2月、次の宮城県沖地震が30年以内に発生する確率を「50%程度」と公表。東日本大震災以降初めて具体的な数字が示され、警戒度は一段と増した。最大級の津波浸水想定の見直しが進む一方、地震の揺れによる被害も見過ごせない。連鎖するリスクへの備えを考える。

<震災時の1.3倍に>
 「復興事業でできたこの地区にも津波が来ると聞いて驚いた。津波で自宅を失ったから、やっぱり怖い」
 2017年3月に全町避難指示が一部解除された福島県浪江町。海から約2.7キロの幾世橋地区の災害公営住宅に夫と暮らす鎌田豊美さん(72)が困惑した表情を浮かべる。心配のもとは福島県が3月に公表した最大級の津波想定だ。
 浸水面積は東日本大震災の1.3倍、沿岸10市町の5.9%に及ぶ。浪江町は震災の津波が到達しなかった地区の災害公営住宅85戸や昨春開校したなみえ創成小・中、認定こども園が想定浸水域に入った。
 町は津波ハザードマップを見直す。安倍靖総務課長は「いたずらに不安をあおりたくないが、しっかりリスクを伝えないといけない」と表情を引き締める。
 想定は11年12月施行の津波防災地域づくり法に基づく。最大級の津波から命を守るため都道府県に策定を義務付け、被災3県では福島が震災の津波などを基に初めて公表した。
 震災時より浸水域が広がるのは当時、干潮だったためだ。同法は潮位を約1メートル高い「満潮」、防潮堤は「決壊」などと最悪シナリオを前提に策定を求めており、想定浸水域が平野部を中心に奥へ奥へと広がった。

<計画の条件緩和>
 復興した街が「浸水」してしまう事態は、福島県に限った話ではない。
 震災発生から間もない11年7月、国は被災各県に津波浸水シミュレーションの手引きを示し、潮位を満潮とするなど最大限の被害を想定して復興まちづくりを進めるよう助言した。
 これに対し、宮城県内の沿岸自治体から「想定浸水域が広がりすぎてまちづくりに支障が出る」と懸念の声が相次いだ。
 沿岸の事情を踏まえ宮城県は11年10月、避難計画は最悪の津波を想定するものの、復興まちづくりの想定は「潮位は震災時(干潮)」「防潮堤は破壊しない」など条件を緩和し、各自治体に伝えた。岩手、福島両県も震災津波を前提に復興を進めた経緯がある。
 宮城県の検討に携わった茂泉博史・県北部土木事務所長は「防潮堤やかさ上げ道路で多重防御を図り、住民が安心して暮らせる環境づくりに苦心した。ただ最大級の津波では復興後の街も『逃げる』ことが大前提になる」と強調する。

<域外も備え必要>
 岩手、宮城両県が今後示す想定次第では、住民に困惑が広がる事態も懸念される。福島県の想定もあくまで現時点のもの。内閣府の検討会が日本海溝・千島海溝沿いの巨大津波モデルの検討を進めており、結論が出れば見直しは必至だ。
 福島県の想定に関わる東北大の越村俊一教授(津波工学)は「モデルが出れば想定浸水域がさらに広がる可能性が高い。最大級の想定は『ここには津波が来ない』と安全を保証するものではなく、想定の線引きを超えた命を守る備えが必要だ」と訴える。(報道部・高橋鉄男)

[津波防災地域づくり法]津波に強いまちづくりを進めるため2011年12月に施行。都道府県が最大級の津波浸水想定を設定し、市町村が被害軽減に向けた計画を作る。都道府県は避難体制を整備すべきエリアを「警戒区域」、開発行為や建築を制限すべきエリアを「特別警戒区域」に指定できる。浸水想定は36道府県が策定済み。


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2019年06月13日木曜日


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