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<強制不妊救済法>岩手県の一時金申請低調 県の消極姿勢に疑問の声 冊子だけ置き相談待ち

岩手県庁の一時金申請窓口。積極的に申請を働き掛けることはしないという

 旧優生保護法(1948〜96年)下で強制不妊手術を受けた被害者に支給する救済一時金の申請を巡り、岩手県の消極姿勢が際立っている。厚生労働省の統計では、県内で478件の不妊手術が行われたとみられるが、対応は窓口に冊子を置いただけ。県の受け身体質を疑問視する声も上がっている。(盛岡総局・江川史織)

<資料は処分>
 県への一時金申請は14日時点で1件。相談は8件にとどまる。達増拓也知事は「まだ制度が浸透していない。被害者を救済する態勢を県として整えたい」と旗を振るが、現場の動きは鈍い。
 昨年7月に県は、病院や福祉施設計1076カ所に不妊手術記録の有無を照会。この時点で、個人特定の手掛かりとなる優生手術実施承諾書などが71人分見つかっていた。
 だが、手術が強制だったかどうかは判別できず、仮に被害者が判明してもプライバシー保護の観点から個別に通知することは控えるという。
 支援課の説明は「県に当時設置された優生保護審査会の資料は10年の保存期間が終了したので処分した。本人の請求がなければ医療機関に調査を依頼することもできない」と素っ気ない。
 結局、県の対応は市町村や障害者支援施設への一時金申請に関する冊子の配布にとどまった。相談者が窓口を訪れるのを待つ状態が続いている。

<複雑な感情>
 救済法に基づく取り組みが低調な背景には、複雑な被害者感情もあるようだ。
 花巻市の社会福祉法人「光林会」の三井(みい)信義理事長は「強く申請を促せば被害者が封印したつらい過去を掘り起こしてしまう。それが本人にとって幸せなことなのだろうか」と話す。
 光林会が運営する障害者支援施設でも、あえて手術記録を探し出すようなことはしないという。三井理事長は「たくさんの差別を受けてきた被害者は、救済法施行といっても『何を今更』という感じだろう。一時金を支給するより国が誠意を持って謝罪することが大切だ」と被害者の怒りを代弁した。
 一方、岩手弁護士会の吉江暢洋会長は「強制不妊手術は人権を踏みにじる行為。行政が被害者を救済する手間を惜しんではならない」と指摘。「ささやかかもしれないが、一時金で救われる人もいる。個人情報の提供を呼び掛けるなど、県は積極的に取り組んでほしい」と訴えた。

[救済一時金]今国会で成立、即日施行された救済法に基づき、強制不妊手術の被害者に一律320万円が支払われる。受付窓口は各都道府県。厚生労働省の統計によると、不妊手術を受けたのは約2万5000人。手術実施の個人記録が現存するのは約3000人。


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2019年06月16日日曜日


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