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「臼沢鹿子踊」伝統の舞 心癒やし人つなぐ 岩手・大槌

岩手県大槌町の神社に奉納された郷土芸能「臼沢鹿子踊」で笛を吹く東梅さん=1月1日

 東日本大震災の津波で甚大な被害に遭った岩手県大槌町で、被災して間もない頃から住民を励ましてきた郷土芸能がある。祝い事や故人の供養のため、約400年間舞い継がれてきた「臼沢鹿子踊」だ。保存会の会長東梅英夫さん(73)は「震災後、鹿子踊に人との絆など目に見えない魅力があると感じるようになった」と目を細める。

 2011年3月11日、前年まで勤めた釜石市の会社を訪れていた際に大きな揺れを感じた。渋滞を避けて帰宅すると、自宅に隣接する鹿子踊の伝承館に近所の住民らが避難してきた。「町は全滅だ」と口にする人や、家族を捜しに来る人で緊迫。東梅さんも津波で親族を失い、悲しみに打ちひしがれた。
 震災から約1カ月、お笑い芸人らの慰問にみんなが大笑いしていた。東梅さんはそれを見て「鹿子踊をやってもいいのでは」との思いに駆られた。
 一方で「こんなときに何やってんだ」と言われる怖さを拭えずにいたが、約20人の仲間と避難所で鹿子踊を披露。白く長いたてがみの付いた鹿子頭を振りながら、笛や太鼓に合わせて勢いよく舞った。それを多くの人が涙を流したり手をたたいたりして、食い入るように見てくれた。
 「おめえも俺も同じ気持ちだ」。隠していた感情を出せたという一体感があったと振り返る。
 その後、活動の場が広がり、昨年は長野県や岐阜県でも演舞した。また埼玉県や兵庫県、米国から大槌町に踊りに来てくれる人もいる。「人と人がつながっていることがすげえ財産だ」と笑う。
 保存会のメンバーは100人を超え、3分の1は子どもだ。続けてくれるよう、やりがいを感じさせることが課題。震災から8年余りが過ぎ、町を離れる人も多い。東梅さんは「鹿子踊を町民の心のよりどころにしたい」と力を込める。


2019年06月16日日曜日


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