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<せんだい進行形>旧姓使用地銀に広がる? 仙台銀が東北初の制度化

取引先の担当者と打ち合わせをする森さん(右)

 仙台銀行は昨年、行員が結婚などで姓を変えた際、旧姓を業務上の通称として使い続けることを認める新制度を作った。実は、東北の地方銀行では初の試み。取材してみると、多くの企業や行政機関で旧姓の通称使用が一般的になる中、東北の地銀ではほとんど認められていないことが分かった。仙台発の動きは東北に広がるだろうか。(報道部・高橋一樹)

◎大手は10年前に許可 女性活躍進める契機

 仙台銀が制度を導入したのは昨年10月。それまでは戸籍名で登録する公的書類に合わせて名刺や名札、印鑑などを必ず新姓に変えなければならなかった。今は、人事課に申請すれば旧姓を使える。
 運用上の方針として認める東邦銀、特例的に個別対応した岩手銀の例はあるが、明確に制度化したのは仙台銀が初めてだ。

<一元管理難しく>
 第1号は昨年6月に入籍した地元企業応援部推進室主任の森香子さん(29)。入行7年目。「行内外の人に『森』で覚えられていたので変わると混乱させてしまう。今までの仕事が分断されるような気もしていた。引き続き森を名乗れてありがたい」と笑顔を見せる。
 仙台銀や他の地銀によると、銀行では旧姓を対外的に使うことで金融商品販売上の問題が生じる可能性がある。保険や投資信託などの販売資格も戸籍名で登録するため、販売の際に旧姓だと関連法に抵触する恐れがあるという。
 東北の全15行の対応は表の通りで、多くの地銀は旧姓の通称使用を原則認めていない。ある地銀は「現行のシステムでは旧姓使用を認めると一元管理が難しくなる」と説明する。

<3〜4割が使用>
 三菱UFJ、三井住友、みずほの大手3行にも聞いたところ、遅くとも10年前には旧姓使用を選べるようになったと回答。みずほ銀は「大体3〜4割の行員が旧姓を使っている」と話した。3行とも戸籍名は人事部門で管理しているが、通称では旧姓使用が定着しているという。
 なぜ地銀は違うのか。
 東北の多くの地銀は「要望があれば対応するが、そもそも要望がない」と答えた。うち東邦銀の担当者は「17年10月に旧姓を選べるようにした。認めていないわけではなく、企業文化なのかな」と明かした。
 地銀の何人かの行員にも尋ねたところ「銀行なら仕方ないのでは」「問題があるとは思わない」との反応があった。保守的な地域性なども重なり、地銀では旧姓を使いたいというニーズ自体が少ないのかもしれない。
 ただ、宮城県内で勤務するある地銀の20代女性行員は「何となく新姓に変えなければいけない雰囲気はあるけど、『そのままでいいのに』『面倒だなあ』と言う人も、わざわざ結婚をアピールしたくない人もいる。もし選択できるようになれば旧姓を使う行員は結構いるはず」と話してくれた。

<ルール作り必要>
 仙台銀は森さんが要望したことを機に、女性活躍推進の一環でルール作りに着手。契約書、取引氏名など新姓を使用しなければならないケースを明示した使い分けシートを希望者に渡した上で、旧姓使用を認めることにした。
 現在は女性行員5人が旧姓のまま働く。制度作りを担当した人事課の池田美香主管は「使い分けには注意が必要だけど、できないことはない。行員が働く意欲を維持し、活躍を広げるきっかけになればうれしい」と力を込める。
 11月からは住民票に旧姓を併記できるようになり、運転免許証でも併記が検討されるなど、社会全体では旧姓使用が普及しつつある。選択は本人の自由だが、現状ではやむを得ず新姓を使う行員もいる。地銀は要望を待つだけでなく、積極的にルールを作る必要がありそうだ。

◎仙台の企業 東北電は選択可

 仙台市に本社を置く幾つかの企業にも、旧姓の通称使用について聞いた。
 東北電力とアイリスオーヤマは「認めている」と答えた。東北電は2008年に選択可能にしたという。
 藤崎は要望を受けたことはあるが認めていない。担当者は「レジでレシートに接客員の戸籍名を印字するため、名札と違うとお客さまに不信感を与える」と説明。レジは全社で戸籍名と連動しており、個別変更はできないという。
 一方、仙台三越は二十数年前から認め、12人が旧姓を使う。戸籍名が印字されるレシートには旧姓のはんこを押しており、苦情が来たことはないという。
 河北新報社は社員の希望があれば、名刺の継続使用や紙面上の署名記事で旧姓使用を認めている。


2019年06月21日金曜日


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