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<地上イージス>生活圏外へ選び直しを 町の移住施策に大打撃/配備「反対」山口・阿武町長に聞く

人口増減の表を指さし、町の施策で社会減少を食い止めてきたことを熱弁する花田町長=14日、山口県阿武町

 防衛省が秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と山口県の国内2カ所に配備を検討する地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。山口の候補地となっている陸自むつみ演習場(萩市、阿武町)は海から離れた場所にあり、配備されるとレーダー波が日本海に向けて照射される。阿武町民は電磁波の影響を心配し、ミサイルのブースターが町に落下することを懸念する。昨年9月に秋田、山口の2候補地の首長として初めて配備反対を表明した花田憲彦町長に考えを聞いた。(聞き手は秋田総局・渡辺晋輔)

 −むつみ演習場を「適地」とする報告書が5月末に出されたことをどう受け止めたか。
 「防衛省の調査結果が示されただけで、そんなものかというのが感想だ。もともと『むつみありき』のような話から始まったと認識している。報告書ではさまざまな理由付けがされているが、うのみできるかは別次元の話だ」

<稚拙すぎるミス> 
 −秋田県側の報告書では調査ミスが見つかった。
 「稚拙すぎるミス。軽い気持ちでチェックしたのではないか。大事な案件で多くの町民が悩んでいるのに安直な報告書が出てきた」

 −秋田では住民説明会の席上、防衛省の職員が居眠りした。
 「あきれて物が言えない。住民は一言一句聞き漏らすまいと必死なのに、緊張感が欠けている。住民を軽く見ていることが根底にあったとしか思えない」
 「阿武町でも住民説明会があったが、防衛省の説明と住民の疑問とがかみ合っていなかった。設置したい側の理論ばかり説明され、住民の思いの側に立った答えではなかった」

 −候補地の首長として初めて配備反対を表明した。
 「町は、2004年からIターンやUターンを促す定住対策に力を入れてきた。社会増減は1998年からの10年間で333人減だったが、次の10年間は4人の減少にとどめた。町の魅力づくりを進めて人を呼び込み、人口減少のペースを鈍化させた。移住者は30〜40代が多く、農漁業の後継者になっている。町には190人ほどの小中学生がおり、そのうちの50人は移住者の子どもだ」
 「その移住者から『イージス・アショアがあったのならIターンの選択肢はなかった』と言われた。移住がなければこの10年間で300人減り、後継者不足から産業も衰退していたのではないかと思う。町が大事にしてきた施策をひっくり返すのか。そこに一番の憤りがある。ある意味で町の存亡に関わることだ」

<半数以上が反対>
 −イージス・アショアをどう考えるか。
 「ミサイル防衛は否定しないが、陸上に配備しない方が良い。イージス艦だと経費がかかり、他の防衛業務もおろそかになるという考えが防衛省にはあるようだが、陸上に配備すれば住民の生活を脅かすことになる」
 「どうしても陸に置くのなら、住民の生活活動圏域から離れた場所を選び直してほしい。防衛省は配備に1平方キロの広さが必要と言うけれど、海にブースターを落下させれば小さい面積でも大丈夫ではないか」

 −国の防衛政策は覆らないとの見方がある。
 「簡単に配備をやめるとは思っていないが、主張しなければならない。ましてや『配備に反対する阿武町民の会』が設立され、有権者の半数以上が会員となって強く意思表示している。望みはつないでいる」

花田憲彦(はなだ・のりひこ)山口県阿武町出身。広島大中退。1976年に阿武町役場に入庁し経済課長、総務課長などを歴任。退職後、17年4月の町長選で初当選。現在1期目。64歳。


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2019年06月21日金曜日


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