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アメフト練習中に脳出血 後遺症乗り越え学士号

脳出血から学位取得までを振り返る及川さん=特定非営利活動法人「ほっぷの森」

 脳出血による後遺症を乗り越え、仙台市泉区の無職及川和(ひとし)さん(34)が今年2月、工学の学士号を取得した。東北大工学部入学から15年。「障害が残っても挑戦することを諦めないでほしい」と、障害がある人たちにエールを送る。
 及川さんは泉館山高卒。1浪して2004年4月、同大工学部材料科学総合学科に入学した。入部したアメリカンフットボール部の夏合宿中、チームメートにタックルした直後に意識を失った。
 岩手医科大付属病院に救急車で運ばれ、かろうじて一命を取り留めた。高度な医療を受けるため東北大病院に転院。約5カ月間、緩やかな階段を歩くといったリハビリを続け、05年1月に退院した。
 大学には同4月に復帰したものの、講義の進度についていけなかった。脳出血の後遺症が残り、物忘れが多くなり、集中力も低下した。高校で習ったはずの知識も一部が抜け落ちてしまった。
 特に苦しんだのは、週2回の実験で課されるリポート。復帰から10年間、休学を繰り返し、希望する講義を学べる「科目等履修生」に転向するなどして卒業を目指した。
 「もう勉強はつらい」。弱音を吐く及川さんを支えてくれたのが担当教員や、留年や休学後に復学した過年度生が集まる交流会で出会った仲間たちだった。仲間とは講義で学んだことを共有し、不明な点をお互いに教え合った。
 在学期限を迎え、卒業ができないと分かった15年3月、担当教員が「自分に自信を付けるためにも、今頑張るべきではないか」と励まし、「大学改革支援・学位授与機構」を紹介してくれた。
 機構は、大学で履修した単位とリポート、試験の成績を基に学位を与えている。「ここで諦めたら何も残らない」。東北大や放送大学で学位取得に必要な実験や教養の単位を取った。
 論文のテーマは、地震発生時の本棚の転倒予防。東日本大震災など過去の地震データを参考に研究を続け、昨年9月に北海道胆振東部地震が起こり、最新のデータを加えた。
 論文が評価され、今年2月に学士号取得の証しとなる学位記が自宅に届いた。喜びのあまり、思わず叫んでいた。
 及川さんは「学位が取れ、本当にうれしい。苦しい15年だったが、先生や友人と出会えたことは一生の宝物」と話す。
 現在、仙台市青葉区のNPO法人「ほっぷの森」で、社会人として働く訓練をしている。次の挑戦は既に始まっている。


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2019年06月28日金曜日


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