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<大農協元年>合併「新みやぎ」発足(上)スケールメリット/コメ直販 利益拡大模索

「ひとめぼれ」が積まれたあさひな農協の低温倉庫。合併後の販売戦略が焦点になる=宮城県大郷町

 宮城県北の栗っこ(栗原市)南三陸(南三陸町)あさひな(大和町)いわでやま(大崎市)みどりの(美里町)の5農協合併による「新みやぎ農協」(栗原市)が、紆余(うよ)曲折を経て7月1日に発足する。コメ販売高全国1位などスケールメリットが期待される一方、生活に根差した総合農協の役割への不安もささやかれている。宮城県北の現場から、大農協の戦略と課題を探った。

 5農協の合併を間近に控えた25日。美里町であったみどりの農協の通常総代会で、大坪輝夫組合長が新時代への決意を口にした。
 「10年後、20年後も地域を支えられるよう経営資源の集中や事業の高度化、専門化を進める。力強い農業と豊かな地域づくりのため新たな力を発揮したい」
消費者と縁結ぶ
 12市町村にまたがる新みやぎ農協の事業エリアは県面積の3分の1。コメ販売高は179億円(2017年度)と全国1位に躍り出る。
 合併で得るスケールメリットを武器に、看板のコメをどう戦略的に販売するのか。鍵を握るのが、農協が消費者や企業、コメ卸などと直接取引する独自販売だ。まとまった量と種類のコメを確保できる販売力を生かせば、手数料の支払いを伴う全農への委託販売より高い利益率が期待できる。
 大崎地方東部のコメどころを抱え、5農協で最多の正組合員数(1万2240人、17年度)を擁するみどりの農協。コメ集荷量の1割弱を独自販売が占める。その多くが、首都圏の生協でつくるパルシステム生協連合会(東京)への出荷だ。
 18年度に集荷した2万2556トンのうち、生協分は1415トン。長年続ける産地直売と交流会で顔の見える関係を築いた。
 「災害時などに心を寄せて支えてくれた」。美里町の生産農家(72)は産直で紡いだ消費者との縁をかみしめる。一方で「農協には『とにかく売れればいい』という意識がないだろうか」と問い掛ける。
 あさひな農協の18年度のコメ集荷量は1万129トン。大半を全農に出荷し、独自販売は169.2トンと1.7%にとどまる。10年から香港への輸出などに取り組むが、大規模産地ではないこともあり拡大には慎重だ。桜井藤夫組合長は「一定量を確実に買ってくれる取引先でないと難しい。売れ残ると価格低下につながる」と懸念する。
置き去り不安視
 コメの消費は年々減り、米価も下落基調。「合併で独自販売への引き合いは強まるだろうが、高値販売は難しいのが現実。資材の共同購入などで生産費を下げ、組合員の利益になる方策を探る必要がある」と続ける。
 新農協のエリアには平野部や中山間地、沿岸部が混在する。組合員には「地理的に端にあり、置き去りにされるのではないかと心配」「米価下落と資材価格の上昇が続き、厳しい」と不安が漂い、コメのブランド化や担い手育成などに注文の声が上がる。
 他方「農協頼みでは駄目。農家側が農協を動かす提案をしないと」と自立を促す見方もある。
 現場の思いに応え、今後の販売戦略をどう展開すべきか。東北大大学院の冬木勝仁教授(農業市場学)は「各農協が培ってきた販売チャンネルを生かすとともに、栽培条件が合えば独自販売の成功例を他地域に広げてみてはどうか」と提案する。


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2019年06月29日土曜日


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